取締役会の役割や中核人材の多様性を重視

──今回のコーポレートガバナンス・コード改定のポイントを教えてください。

浜田:2020年10月からフォローアップ会議を定期的に開催し、コロナ後の新たな企業の成長へ向けたコーポレートガバナンスの在り方について議論をしてきました。同年12月に同会議より意見書を公表し、コーポレートガバナンス・コードの改定の方向性を示しました。2021年に入ってからも議論を継続し、本年4月に同コードの改定案を公表して1カ月間パブリックコメント手続を実施しました。

 改定の柱は、(1)取締役会の機能発揮、(2)企業の中核人材の多様性の確保、(3)サステナビリティを巡る課題への取り組みの3つです。それぞれ、上場企業に対して以下のような取り組みを求めています。

(1)取締役会の機能発揮
・プライム市場(2022年4月に東証の新市場区分への移行に伴い発足)の上場企業は、取締役会の3分の1以上を独立社外取締役とすること
・経営戦略に照らして、取締役会が備えるべきスキルと各取締役のスキルを公表すること
・指名委員会、報酬委員会を設置すること
(2)企業の中核人材の多様性の確保
・管理職における多様性(女性、外国人、中途採用者の登用)の確保についての考え方と測定可能な自主目標を設定すること
・多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針を、実施状況とあわせて公表すること
(3)サステナビリティを巡る課題への取り組み
・プライム市場上場企業は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)またはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実させること
・サステナビリティについて基本的な方針を策定し、自社の取り組みを開示すること

──人的資本に関する取り組みについては、どのような点が盛り込まれていますか。

浜田:今回の改定で、人的資本や知的財産の重要性がうたわれるようになりました。この背景としては、コロナ禍による社会の急速な変化の中で、企業にとってESGのE(環境)だけでなくS(社会)への取り組みも大事であると、フォローアップ会議の中で指摘されたことが挙げられます。

 例えば海外では、コロナ禍により様々な面で社会的不平等があらわになる中で、雇用の安定性などを含めた人的資本に対する開示の重要性が指摘されています。日本でも、人口が減少し働き手が減る中で、企業はどのように人的資本を活用し、人材の潜在的能力を引き出す施策を行っているかに関して、投資家の関心が高まってきています。

 こうした議論などを受けて、人的資本との関連では、まずコーポレートガバナンス・コードの第4章「取締役会等の責務」で、補充原則4-2(2)を新設しました。ここでは「人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである」としています。

 もう一つ、第3章「適切な情報開示と透明性の確保」で補充原則3-1(3)を新設しました。ここには「人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」という内容を盛り込みました。