人事担当者が自分でデータを使える環境を作る

──その意味で、御社のシステムにはどのような特徴がありますか。

稲垣:当社のヒューマンエクスペリエンス管理ツール「SAP SuccessFactors HXM (Human Experience Management ) Suite」は国内で400社以上が導入し、従業員数の多いトップ100社の過半数が利用しています。

 人に関する業務プロセス全体をカバーできる幅広い機能を実装する半面、その中から必要なものだけを選んで利用できる柔軟性も備えています。例えば、人事給与システムを中心に業務の効率化を目指して導入している企業や、後継者や研修の管理など、タレントマネジメントの機能だけを利用している企業もあります。

 従業員エンゲージメントを向上させるために、パルスサーベイ機能から導入を始める企業もあります。この機能は、全従業員を対象に同じ内容で定期的にサーベイを行えます。定点観測を続けていると、小さな変化に気づけたり、実施した施策の成果が浮き彫りになったりするのです。本人の異動や担当業務の変更、上司の異動、結婚、昇級など、従業員の業務環境が変化するタイミングで適切なサーベイを行えば、従業員体験の改善につながる貴重な情報が得られます。

──KPI設定や分析、組織内外へのリポーティングなどへの効果はどうでしょうか。

佐々見直文氏(以下、佐々見):「SAP SuccessFactors HXM Suite」には、人的資本に関する様々なリポート用のテンプレートが装備されています。この基盤で業務プロセスをデジタル化すればデータが自動的に蓄積され、代表的なリポートをリアルタイムに出力できる体制がすぐに整います。データを表計算ソフトで集計するよりはるかに効率が良く、ヒューマンエラーも防げます。

 プログラミングを必要とせず新しいダッシュボードを自由に作れるので、人事部門の方が自身の手で独自の指標やKPIを作成したり、データを分析したり、リポートを作ったりすることができます。

 過去のデータから現在を分析するだけでなく、未来を見通す予測分析も使いやすくなりました。予測分析といえば、従来はデータサイエンティストが変数やモデルを作成し、数カ月かけて実行していたケースが多いと思います。この場合、人事担当者の希望がうまく反映されなかったり、途中でモデルを変更したくてもできなかったりといった課題がありました。

 当社のシステムには機械学習のテンプレートが組み込まれており、データサイエンティストでない一般のビジネスユーザーでも、容易に予測モデルを作成できます。人事の勘所を理解している担当者が自分でデータを操り、予測分析や因果関係の分析ができるわけです。もちろんデータサイエンティストやプログラマーがこの基盤を使用すれば、さらに深く詳細な分析やカスタマイズが自在に行えます。

佐々見 直文(ささみ なおふみ)氏
佐々見 直文(ささみ なおふみ)氏
SAPジャパン 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部長
多数の人事システム導入プロジェクトを経て、2007年にSAPジャパンに入社。年間50社超の大手グローバル企業の経営層、管理者、人事部とのディスカッションを通じて、今後の人事業務の取り組みやイノベーションを提案。多くの大小規模のイベント人事セミナーの講師、大手企業のグローバル人事戦略や機械学習などの先端技術を活用した人事業務改革のコンサルティング・システム企画・構築・運用のアドバイザリー業務、経営層へ経営戦略によるビジネス効果算出の支援に従事。(写真提供:SAPジャパン)