「日本では『持続可能ではない働き方』をしている人が多い」と指摘するのは、SP総研人事ソリューション・エヴァンジェリスト&CEOの民岡良氏だ。原因は、本人のスキルや方向性と仕事内容が合っていないことだと語る。同総研ではHRテクノロジーを活用し、人と仕事のマッチング率を高める取り組みを進める。ジョブ定義のプロセスや人事に必要な変革について聞いた。

──SP総研を設立した目的と活動内容を教えてください。

民岡良氏(以下、民岡):2021年5月に立ち上げたSP総研の名称ですが、「SP」とは「Sustainable(サステナブル)」と「Performance(パフォーマンス)」の頭文字です。これを想起したきっかけは、ISO30414でした。

 昨年から、岩本隆先生(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授)を座長とするHRテクノロジーコンソーシアム主導のプロジェクトで、「人的資本の開示」に関する国際規格を調査・研究しています。国際標準化機構(ISO)の資料を詳しく調べ、全体像を把握していくうちに、企業の成長や従業員の働き方など、すべての根底に流れるコンセプトを「Sustainable Performance」(持続可能な働き方)と理解したのです。

 「持続可能性」というテーマについて考える場合、まず社会や企業という大枠で考え、「そのために個人は何をすべきか」というように、全体から個へと検討していくのが一般的でしょう。しかし、私はあえて逆に考えてみました。まず「いまの自分(の働き方や生き方)は持続可能な状態なのだろうか」と、自身に問いかけてみたのです。

 そこから考えを広げると、日本では「持続可能ではない働き方」をしている人が多いことに気づきます。例えば、毎朝通勤のためになぜ満員電車に乗って疲弊しなければいけないのか。よく考えると、本質的ではなく理由もよく分からない多数のルールに私たちは縛られています。日本のビジネスパーソンには様々なストレスがあり、心の病気になる人も増えていることはご承知のとおりです。

 持続可能でない働き方を増やしている根本的な原因は何でしょうか。上記のような様々な「悪習」もさることながら、私なりに行き着いた結論は「人と仕事のマッチング度が低いため」です。皆さんは、本当に自分に合った仕事をしているとお考えでしょうか。自分のスキルと経験をフルに生かせる仕事に就けている人は幸せです。「これは天職だ」という人がいますが、それこそが理想的な状態であり、「持続可能な働き方」が目指すべき目標だと考えます。

 そこで私は、HRテクノロジーを使って人と仕事のマッチング度を高める取り組みを始めました。2016年2月から3年ほど、日本IBMで「ワトソン」というAI(人工知能)が組み込まれた人事ソリューションを国内に展開するという仕事に携わり、HRテクノロジーの可能性を大いに感じました。それが、今日のSP総研における活動につながっています。

民岡 良(たみおか りょう)氏
民岡 良(たみおか りょう)氏
SP総研 人事ソリューション・エヴァンジェリスト&CEO 一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム理事 慶應義塾大学経済学部卒。日本オラクル、SAPジャパン、日本IBM、ウイングアーク1stを経て、2021年5月にSP総研代表に就任。日本企業の人事部におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル・コンピテンシー定義を促進させるための啓発活動に従事。現在は「持続可能な働き方」を追求するためのコンサルティングサービスを提供し、ISO30414をベースとした「人的資本の開示」の取り組みについても造詣が深い。著書に『HRテクノロジーで人事が変わる』(労務行政研究所 編、共著)がある。HR関連の様々なセミナーへの登壇実績多数。(写真提供: SP総研)