6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が改定され、企業の取締役会の役割に注目が集まるなか、各社のスキルマトリックス開示への関心も高まっている。

 アサヒグループホールディングスは2021年3月に開催した第97回定時株主総会の招集通知に「取締役会スキルマトリックス」を掲載した。同社が役員のスキルマトリックス定義に着手したきっかけは2019年3月、第95回定時株主総会に遡る。「株主総会の招集通知に、社外取締役から『役員候補者の選任理由をしっかり書くべき』という指摘があった。そこで以前より文章量を増やし、取締役としての要件と役割、再任の場合は実績や成果を具体的に記すことにした」と語るのは、同社取締役兼執行役員CHROの谷村圭造氏だ。

 「役員の選任理由は、通り一遍の記載になりがち。通知を読んだ株主に、この役員なら大丈夫と認めてもらえる内容にしたかった」と谷村氏は振り返る。当時1年半かけて、取締役のスキルマトリックスを完成させた。

アサヒグループホールディングス取締役兼執行役員CHROの谷村圭造氏(撮影:稲垣純也)
アサヒグループホールディングス取締役兼執行役員CHROの谷村圭造氏(撮影:稲垣純也)

 こうした経緯を経て、最新の統合報告書「ASAHI GROUP INTEGRATED REPORT 2020」には、年初から半年弱で作成したスキルマトリックスが掲載されている。「スキルマトリックスはとかく、形式的で平板なものになりやすい」と谷村氏は指摘し、「コーポレートガバナンス・コードへの表面的な対応では意味がない。当社は、スキルマトリックス作成を取締役会の実効性を高めるためと位置付けている」と明言する。

 作成に当たって他社事例も参照した。「米ウォルマート、資生堂は、各スキルの必要性と経営戦略との結び付きを明記していたこと、網羅的ではなくポイントを突いたマトリックスになっていたことなどが参考になった」(谷村氏)