スキル定義をフレームワークで検討

 アサヒグループホールディングスのスキルマトリックスと、各スキルの説明を以下に示す。特徴はスキルを「意思決定」と「監督」の2つに大別している点だ。

アサヒグループホールディングスの取締役スキルマトリックス(同社統合報告書より編集部作成)
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アサヒグループホールディングスの取締役スキルマトリックス(同社統合報告書より編集部作成)

 それぞれのスキルを、どのようにして決めたのか。谷村氏は、「『意思決定』は経営理念Asahi Group Philosophyをベースに、長期的な企業価値向上に必要な要素を選んだ。一方『監督』は経営の継続性を担保する内部統制や人材マネジメントの要素を盛り込んだ」と説明する。

 「意思決定」のうち、「グローカル経営力」は2019年に同社が掲げた「地球規模の視野で考え、地域視点で行動する』という考え方に基づく。

 「『サステナビリティ経営思考』とは単に専門知識があるだけでなく、サステナビリティの発想があるということ。ここは表現にこだわった」と谷村氏は語る。「自社だけでなく社会への貢献も含め、社会課題の解決が重要であることを明確に打ち出していく」(谷村氏)

 「非連続成長推進力」は、イノベーションとM&A(合併・買収)を含めた提携を表す。「テクノロジーを生かしたイノベーションや、提携などで自社が持たない能力を外部から取り入れるなど、非連続的な成長を推進するスキルを指す」と谷村氏は説明する。「当社のバリューは挑戦と革新。不確実性の高い時代に、こうした非連続な成長を許容できる能力が重要だと考える」(谷村氏)

 同社ではスキル定義を取締役会の実効性を高めるためのフレームワークの一環と位置付けている。「最初に取締役会の意思決定と監督に必要なスキルを定義し、次にそのスキルを持つ人材を揃え、そして取締役会で議論すべきテーマで中身の濃い討議をする。この3つの柱が揃わないと取締役会の実効性は上がらない」(谷村氏)

 この背景には「3年前の反省」がある。

「2018年、当時の代表取締役会長の泉谷直木と社長の小路明善から、『取締役会の実効性の評価が、毎年ご破算になっていないか。PDCAを回していないのではないか』と指摘された」と谷村氏は振り返る。「ご破算」とは、翌年に評価項目が変わるなど、継続して検討し実績を積み上げた成果が出ていないという意味だ。「これを避けるため、フレームワークで考える必要があった。スキルマトリックスが、当社の持続的成長と企業価値向上にシンクロしないと意味がない」(谷村氏)。今回はフレームワークの採用により、納得性の高いスキルマトリックスが作成できた、と谷村氏は語る。