スキル開示の効果は納得性の向上

 スキル開示の効果として谷村氏は、「経営戦略や人事戦略を投資家に説明する際、ストーリーをもって伝えられるようになり、投資家との対話が充実した。判断のための共通言語ができ、課題を指摘してもらいやすくなった」と指摘する。同時に社内に対しても「スキル開示により、役員の選任についての納得性が高まったと感じる」(谷村氏)

 注意が必要なのは、開示内容が一人歩きすることだ。「単に丸の数だけで判断されるのは避けたい」と谷村氏は語る。「例えば、丸の数が少ないから社長には不適任といった議論になるのはよくない。経営陣にはアートも必要だ」(谷村氏)。次年度以降の取り組みとして、「各取締役の丸の数を減らし、代わりにスキルの意味付けをしたりストーリーを強化したりすることも検討する。各自のスキルと取締役会の中での役割、取締役会全体としての機能に着目し、マトリックス単独で勝負しない方針にしたい」と谷村氏は説明する。

 経営戦略が変われば取締役会に求められるスキルも変化する。スキルマトリックスは、今後どのくらいの頻度で見直しをするのか。谷村氏は、「周囲の環境の変化は前提条件。企業価値を継続的に上げるにはスキルマトリックスも変える必要があり、レビューは毎年行う」と答える。「必要に応じて項目や人の入れ替えも検討する。取締役会は個々に必要な要件もあるが、チームとしての構成が大事。『全員が4番バッター』でもよくないので、メンバー構成によってスキル変更もありうる」(谷村氏)

 コーポレートガバナンス・コード改定により企業のガバナンスが注目されているが、谷村氏は「ガバナンスについて議論する際、取締役会と執行をセットと考え、高度にバランスを取っていかないと形骸化してしまう」と警鐘を鳴らす。「透明性、客観性を強化して監督力が高まっても、肝心の執行側が進まないと意味がない」(谷村氏)

 さらに谷村氏は、ガバナンスに対する意識を経営陣だけでなく社員一人ひとりが持つことの必要性を指摘する。「通常、企業統治に直接的に関わるのは一握りの経営陣ともいえる。しかしガバナンスにかまけて、社員が日々行っている業務を見過ごすことは許されない。企業統治と社員の日常業務が相互に作用していると考えるべき」とし、社員一人ひとりが企業統治の当事者になる重要性を語った。