2021年11月、政府から2つの新たな文書が発表された。内閣官房「新しい資本主義実現会議」による緊急提言と、経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」の中間報告だ。どちらも企業の人的資本に言及した。2文書の概要を人的資本経営にフォーカスしてリポートする。

(写真:123RF)
(写真:123RF)

 内閣官房の「新しい資本主義実現会議」は2021年11月8日、「緊急提言~未来を切り拓く『新しい資本主義』とその起動に向けて~」を取りまとめた。また、11月12日には経済産業省の「非財務情報の開示指針研究会」が中間報告を行っている。どちらも企業の人的資本に言及する部分がある。人的資本経営の観点から、重要と思われる部分をチェックする。

 前者は、岸田文雄内閣総理大臣が「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」の実現に向けて開催している有識者会議だ。緊急提言は17ページから成り、取り上げているテーマは科学技術立国、スタートアップ支援、地方活性化、経済安全保障などと幅広い。内容は「成長戦略」と「分配戦略」の2つに分かれており、企業の人的資本への言及が見られるのは分配戦略の中の「1. 民間部門における中長期も含めた分配強化に向けた支援」にある「(4)労働移動の円滑化と人的資本への投資の強化」という項目だ。この骨子を要約すると、以下のようになる。

1)企業は長期的な視点に立ち、株主だけでなく従業員や取引先も恩恵を受けられるように経営を行うべき

2)日本企業の人的投資は欧米に比べて低水準

3)金融審議会において、有価証券報告書での人的資本を含む非財務情報の開示を充実させるための検討を行う

4)人的資本投資の支援を強化する3年間の施策パッケージを設ける。具体的にはデジタル人材の育成支援、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の支援など

5)雇用を回復させるため、再就職や職業訓練の支援、トライアル雇用や在籍型出向などへの助成を強化する

6)働き方に関して中立的な社会保障や税制の整備を進め、勤労者皆保険の実現などへ取り組む

 企業の人的資本投資を促進するため、人材の育成や採用などに関して国の支援や助成を進めていく方針を明らかにしている。今回は人的資本経営に言及している部分を切り出して報告したが、男女間の賃金格差の解消や賃上げを行う企業に対する税制支援などへの言及もあり、労働者全般の地位向上に向けた複数の提言が盛り込まれている。