人的資本の情報開示を求める動きが加速する中、ガイドラインとなる国際規格「ISO30414」への対応を始める国内企業も増えている。その過程で誰もが直面する課題が2つある。開示情報についてISO30414が規定する49項目のどれを重視すべきかの検討と、社内からデータを収集する仕組み作りだ。

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 人的資本の情報開示を米国の上場企業に義務付ける米証券取引委員会(SEC)の新しい規則が2020年11月9日に発効した。すでに対応が必要になっている。

 機関投資家が、企業に対して人的資本の情報開示を求める動きも加速している。世界最大級の投資会社である米ブラックロックが、投資先企業に対する5つの重要評価基準の1つに人的資本マネジメントを入れたことは「人的資本の情報開示、ついに義務化!米SECが8月末に発表」で報告した。その後9月に発表したアニュアルリポートでは、同社はこの1年間で人的資本マネジメントに関する企業との折衝を750回実施したと伝えている。前年同期比187%の増加だという。

 企業側にも、積極的に人的資本の情報開示を進める動きが見られる。時流を先取りして投資家の関心を呼び込むとともに、様々な改革を進めて企業競争力を向上させる狙いがある。

日本企業にもISO30414への対応広がる

 投資家は比較可能性を重視する。人的資本の情報開示は、国際的に認められたガイドラインに合わせて進めることが重要だ。それによってリポートの透明性が高まり、説得力のある説明が可能になる。

 非財務情報の開示に関する国際的なガイドラインはいくつかあるが、中でも人的資本報告(Human Capital Reporting=HCR)に特化した国際スタンダードとして注目されているのが、国際標準化機構(ISO)の国際規格「ISO30414」だ。HCRに盛り込むべき内容を11領域49項目にまとめている。海外ではすでにISO30414がかなり浸透している中で、日本国内でもこれに対応する動きが始まっている。

 そうした企業では、ISO30414への対応で直面する課題が主に2つあるという。1つはISO30414が示す11領域49項目のうち自社にとってどれが重要かを見極めること。もう1つは、その項目が求めるデータを社内組織から収集し、集計や分析を可能にする仕組みを構築することだ。

 企業は11領域49項目すべてに対応しなければならないわけではない。この項目は、HCRに必要な項目を網羅する“総合カタログ”のようなものだ。HCRに盛り込むべき内容は業種や業界、企業の規模や性格によっても変わってくる。企業は総合カタログの49項目から、自社にとって重要な項目を選択して対応することになる。

 ただし、49項目に一貫するポリシーがある。それは、必ず客観的なデータを伴って説明することだ。ISO30414は各項目について開示すべきデータの意味や計算方法を解説している。それらをクリアしなければ、ISO30414に準拠しているとはいえない。