組織横断的にデータ収集する仕組みが必要

 11領域49項目の全体像については別記事に記載するが、ISO30414の内容はかなり具体的だ。だからこそ、分かりやすくもあり対応が難しくもある。

 例えば11領域の1つに人件費(Cost)がある。これは業態を問わず、多くの企業に関係するだろう。この人件費の領域では、「総人件費または総労働力コスト」「外部の人件費」「平均給与と報酬の比率」「総雇用コスト」「雇用当たりのコスト」「採用のコスト」「離職のコスト」――という7項目が提示されている。

 最初の「総人件費または総労働力コスト」であれば、財務システムから簡単に数字を拾えると考えるかもしれない。確かにそれが可能な企業もあるだろうが、企業によってはそう簡単にはいかない可能性がある。なぜならISO30414は、その解説の中で「総人件費には外部の人件費が含まれる」とし、「総人件費とは総報酬コスト、給付コスト、外部労働力コストの総和である」と定義しているからだ。

 つまりISO30414の総人件費とは、給与だけではない。給与以外の報酬や手当、税金や社会保証にかかったコスト、外部の労働力に支払ったコストなどの総和として出す必要があるのだ。同時に各データの正当性を担保するため、エビデンスとトレーサビリティーを確保しておく必要がある。

 どんな企業でもコストは管理しているから、データ自体は持っているはずだ。しかし、そのデータはどこにあるだろうか。種類や内容によって所管する部署が違う可能性もある。どの部署が何のデータを管理しているか把握し、組織横断的に数字を集めて集計・分析できる仕組みを構築しなければ、ISO30414が求める数字を算出することはできない。このような取り組みを、あらゆる項目に関して行う必要がある。それがISO30414に対応する難しさの1つとなっているのだ。HRテクノロジーの活用も視野に入ってくるだろう。

 このようにISO30414に準拠したHCRを作成するには、社内各組織の横断的な協力が必要になる。経営のトップレベルに位置するCHO/CHRO(最高人事責任者)のリーダーシップがなければ進みにくい課題といえよう。

 海外では、ISO30414に準拠したHCR作成を支援するコンサルティングサービスが続々と誕生している。国内でも、ドリームインキュベータ(東京・千代田)が10月20日に国内初として発表している。英国やドイツ、米国などでは、対象企業がISO30414への対応を第三者の立場から監査し、認証を与えるサービスもすでに始まっている。昨今のコロナ禍をふまえ、リモートによる監査を行っている組織もある。

 こうした仕組みが広がってくると、ISO30414への対応はさらに加速していくだろう。