国際標準化機構(ISO)の国際規格「ISO30414」は、人的資本経営にHRデータの活用が欠かせないと説く。HRテクノロジーでデータを収集・分析し、意思決定の精度を高めることで、人的資本経営は大きく前進する。ISO30414とHRテクノロジーの関係と役割について、HRテクノロジーコンソーシアム代表理事の香川憲昭氏に話を聞いた。

――HRテクノロジーコンソーシアムとは、どのような組織でしょうか。

香川憲昭氏(以下、香川):HRテクノロジーを活用して人的資本経営を推進していくための会員組織です。2020年10月に100ページを超える「ISO30414調査研究レポート」を発表しました。人的資本報告の国際規格「ISO30414」について詳しくまとめた、日本初のリポートです。

 米国証券取引委員会(SEC)が人的資本の情報開示を義務化しましたが、その背景にあるメガトレンドを分析し、ISO30414を基本とするHRテクノロジーの活用法を解説しています。日本企業がどう備えるべきかについても議論しました。

――ISO30414とHRテクノロジーは、どのような関係にあるのでしょう。

香川:ISO30414は、序文の中で「HRデータを活用すべき」だと明言しています。HRデータの収集と蓄積が、全ての基本になるのです。HRテクノロジーはそれを効果的に進めるための基盤です。

 詳しくは後で説明しますが、HRテクノロジーを用いたデータ活用には5つの成長段階があります。欧米の先進企業は既に5段階目の「人工知能(AI)を労働力の一部として活用するレベル」に達していますが、日本企業の多くは、第1段階の「データ収集」から始める必要があります。ISO30414への対応に向けて、HRテクノロジーの整備を急ぐ企業が増えています。

香川憲昭(かがわ のりあき)氏
HRテクノロジーコンソーシアム代表理事、ISO30414リードコンサルタント
京都大学法学部卒業後、KDDIの新規事業開発部門を経て2001年に創業間もないドリームインキュベータに参加。経営コンサルティングおよびベンチャー投資業務に従事。2007年にJINSの執行役員として経営企画室長、店舗運営責任者、総務人事責任者を歴任し、東証一部昇格に貢献。2014年にはGunosy(グノシー)に人事責任者として入社し、東証マザーズ上場を果たす。2017年9月よりペイロール取締役に就任。営業・マーケティング部門統括およびHRテクノロジー分野の新規事業開発を陣頭指揮。2020年9月より現職。ISO30414リードコンサルタントとして、ドリームインキュベータとともに人的資本のマネジメント(HCM)を支援している。

抽象的・定性的なHR要素をKPIで定量的に把握

――ISO30414の人的資本経営において、HRテクノロジーはどのような役割を果たしますか。

香川:ISO30414の根幹は、KPI(重要業績評価指標)による定量的な測定とリポートです。いかに定性的な内容であっても、定量的な指標で説明することが必要です。

 「企業文化」などが典型例でしょう。企業文化には多くの側面がありますし、捉えどころがない感じがしますよね。どのようなKPIを用いれば、これを定量的に説明することができるでしょうか。ISO30414は、例えばエンゲージメントスコアを一つの指標として活用する方法を提案しています。

 世の中には、まだデータ化されていない事象が無数にあります。しかしそうした抽象的なものが、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などによって続々とデータ化され、定量的に把握できるように変化しているのです。データを活用すれば、意思決定の精度が飛躍的に向上します。客観的な事実に基づいて人事戦略を策定し、実施し、成果を測定して改善する――。このサイクルを回すことによって人的資本経営の質を高めていくための基盤がHRテクノロジーです。

 これは世界的な潮流であり、今後ますます加速します。部分的でもよいですから、日本企業も早く始めるべきです。HRテクノロジーは、活用すればするほど習熟度が上がります。早く着手しなければ、欧米との差は開くばかり。そのきっかけとして、ISO30414は良いテーマだと思います。