業務支援手当で多様な働き方をサポート

 

 新生銀行グループでは、多様な社員が自らの能力を最大限発揮できる環境を作っていくため、従前より時差勤務や在宅勤務を導入してきた。2020年は新型コロナウイルスの流行への対応として、在宅勤務の利用が一気に加速したことをきっかけに、今後も働き方を元には戻さず、より時間や場所にとらわれない働き方の促進を目指している。ニューノーマルを見据えたビジネス展開も視野に入れて、2020年10月からは在宅勤務時の勤務場所を実質自由化し、情報セキュリティが順守されればどこでも働けるようにした。

 新しい働き方を実現するために諸手当の見直しにも踏み込み、これまでの働き方を前提とした手当の原資を再配分していく。2021年1月より通勤交通費(定期券代)の支給を廃止し、社員に「業務支援手当」として月5000円を支給する。「在宅勤務環境を整備したい」「自宅近くのシェアオフィスで働きたい」など、社員が多様な働き方を志向するのを尊重しサポートするための手当だ。支給当初は一時的に通勤交通費の実費精算を行うが、2021年度秋をメドに実費精算も廃止し、それを加味した金額も加算して、業務支援手当への一本化を予定する。ニューノーマル下でのあるべき姿を踏まえ、従来の働き方を前提として設計され支給している昼食手当や住宅補助なども将来的に業務支援手当に集約していくことも検討している。

 テレワークがメインとなる環境下での評価方法・コミュニケーションのあり方も見直している。テレワークでは対面で仕事をするとき以上に、業務の自己管理に加えて、チーム内での積極的なコミュニケーションやお互いへの配慮が必要となる。コミュニケーションツールの充実や、パフォーマンスマネジメントの一環として1on1の仕組みなどを新たに取り入れる。併せて、テレワーク時におけるリーダシップ向上の研修をはじめ、オンライン研修の充実も検討している。

メンバーシップ型とジョブ型、利点も課題も知る

 過去にはジョブ型採用の色彩を強めた経験がある。

 新生銀行は、経営破たんした旧・日本長期信用銀行を母体として2000年にスタートし、リテールビジネスに本格参入する一方で投資銀行ビジネスにも力を注いだ。部門制を導入して、部門長に人事権を含む幅広い裁量権限を与え、外部環境に応じてビジネス現場が迅速に意思決定できる組織体制を採った。専門性と習熟度を短期間で高めるために、中途の即戦力採用を積極的に行った。当時も職能的な資格制度や給与テーブルはあったが、専門人材については、職務内容やスキル、経験、マーケット水準で個別に報酬を決定する、いわゆるジョブ型雇用を実践した。

 それが奏功して事業は拡大したが、2008年のリーマン・ショックで大きな損失を出し、短期収益主義の課題が浮き彫りになった。全社最適よりも部門の短期的収益を追求する組織になり、人材の囲い込みやサイロ化が進んでいた。部門や職種を超えた異動がないため、長期的視野に立った社員の育成も難しかった。また年功的な運用が残っていたため、報酬決定の基準やプロセスの不透明さや公正性に不満を持つ社員もいるという状態だった。

 そこで2012年以降は、部門の権限を縮小させるとともに、中長期的な観点で総合力のある金融人材を育成することを前提に、新卒や若手に2~3年でのジョブローテーションを復活。自己申告やキャリア面談をベースにした異動設計を行うなどメンバーシップ型組織運営への一定の回帰を行った(部門制は2016年4月以降廃止)。この制度変更によって人材育成面などでプラスの効果があった一方で、専門人材の市場価値向上やキャリアアップという観点ではやや後退した側面もあり、処遇についての透明性や公正性の不満は解消できないままだった。

 2016年に現在の経営トップ(工藤英之代表取締役社長)が就任してからは、人事領域のあらゆる課題を棚卸しして改善する「総ざらえイニシアティブ」に着手した。雇用については柔軟な雇用・就労形態の併存を目指すが、成果主義に基づき個人のパフォーマンスを評価する点においては従前と変わりなく、年功での運用や終身雇用を前提としていない。新卒採用においても、データサイエンティストなど、職種別採用コースを設計し、初任給の額も他の職種より10万円以上引き上げている。2022年度採用から、新事業創出を担う人材に限定した「イノベーターコース」も導入予定で、同様の処遇を適用する。