仕事とプライベートの切り分けに悩む社員たち

 一方、社員は別の悩みを抱えている。日経BP総合研究所が実施したテレワーク調査の自由意見には、次のような書き込みが集まった。「休憩を取らずに、働き過ぎる傾向にある」「自宅にいることで自分が納得するまでトコトンやってしまい、気づくといくらでも残業してしまう」。

 テレワークを積極活用する富士通の森川学総務・人事本部シニアディレクターは「生活と仕事のボーダーが低くなるのは事実。一部社員からもそのような(疲れを感じるなどの)声が出ている」と話す。

 真面目な従業員ほど「成果を出さねば」とプレッシャーを感じて頑張りすぎてしまう。特にテレワークは働く場所と生活の場所が一緒なので気持ちを切り替えにくい。朝起きてから夜寝るまで、ずっと仕事のことを考えてしまう。そんな思いが“隠れ残業”につながっていく。

 ジョブ型のような人事制度が広がると、成果を出そうと焦るあまり、隠れ残業がさらに増える可能性がある。「テレワークは心身の負担が大きいように感じます。時間の使い方、休憩の取り方といった所を考えていく必要があると思います」。日経BP総合研究所の調査に寄せられたこのような意見に、企業は向き合っていかなければならない。

 既に対策に乗り出している企業もある。例えば富士通は「これまで以上に、働いた時間をきっちりと記録してもらうよう努めている」(森川氏)。具体的には勤怠管理システムに勤務開始と勤務終了を申告するボタンに加えて、中断ボタンや再開ボタンを設けている。実際の労働時間をより正確に入力できるように工夫を凝らす。

 社員の勤務環境を見える化できるITツールは増えている。パソコンのキー操作や内蔵カメラで働きぶりを見える化するサービス、メールの送信履歴やログデータから作業時間を調べるサービスなどだ。

 富士通も隠れ残業を防ぐ目的で、パソコンのログインとログオフの時刻を取得している。勤怠管理システムに入力された勤務記録との間に大幅なズレがある場合は、上司にアラートが飛ぶ。

 テレワーク中心の時代は、ビジネスパーソンの自己管理がこれまで以上に求められる。無理して隠れ残業を続けたところで、体調を崩して休んだり離脱したりしたら同僚や会社に迷惑がかかる。自分自身や家族にとっても良くない。

 仕事だけではなく、就寝や起床、食事を含め規則正しい生活をこれまで以上に心掛けることが大切だ。散歩など適度な運動も組み込みたい。テレワーク疲れを避けるには、生活習慣の改善から取り組むことが欠かせない。

 デジタル技術による隠れ残業の防止と、従業員の自律性――。ニューノーマル(新常態)の時代を生き抜く企業と従業員は、それぞれに創意工夫が求められる。

『テレワーク大全』(日経BP)などの内容を基に執筆した。