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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で多くの企業がテレワークの導入に踏み切り、人事制度についても大幅に見直す企業が増えている。働く場所はどこであれ、社員が持てる力をフルに発揮できる制度を整えて、会社としての成果につなげるのが人事部門の役割である。一連の働き方改革を先頭に立って推進する役割を担うのが経営者だ。にもかかわらず、経営者が改革の阻害要因になっているケースがある。

 「社長がテレワークに否定的だ」「経営者がテレワークを快く思っていない」。

 日経BP総合研究所イノベーションICTラボがビジネスパーソン約3000人を対象に実施した「新型コロナ対策テレワーク実態調査」に寄せられた自由意見である。調査は緊急事態宣言が出された直後の4月に実施した。緊急事態宣言のさなか、経営者の無理解のせいで、出社を強いられたという不満の声だ。

 緊急事態宣言から半年強。日立製作所やNTTなど大手企業が在宅勤務を本格的に活用することを決めるなど、テレワークが日本企業に根付きつつある。テレワークに否定的な経営者も春先よりは減ったかもしれない。それでも、残念ながら根絶したとまでは言えない状況にある。

 経営者がなぜテレワークに否定的なのか。最大の理由は、お金がかかるからだ。ノートパソコンやWeb会議ツールはもちろん、情報セキュリティーを確保するためのVPN(仮想私設網)などを新たに用意する必要が生じる。このような投資は売り上げや利益にどの程度貢献しているのかが見えにくい。

 IT投資に後ろ向きな経営者の姿勢を真っ向から否定するのが、さくらインターネットの田中邦裕社長だ。「ノートパソコンなどのITツールにかかる料金は人件費に比べれば安いもの。経営者がツール代をケチるのは不合理だ」。

 同社は3月に派遣社員を含めいち早くテレワークに踏み切った。ITツールについてはZoom(ズーム)やSlack(スラック)、Microsoft(マイクロソフト)365などについて、社員が高機能版を使えるように契約している。それでもかかる費用は「1人当たりせいぜい月2万~3万円ほど。効率アップなどの成果に比べたら安いものだ」(田中社長)。