三菱ケミカルが人事改革に力を入れている。ジョブ型人事の導入・刷新と並行して、人事関連のデータを活用したピープルアナリティクスにも注力する。退職防止や人材適正配置に活用し、ジョブ型人事制度のKPI設定にも生かすことを狙う。
(写真:123RF)

 ピープルアナリティクスは企業内の様々なデータをAI(人工知能)などで分析して働きやすい職場を作ったり、人材関連の課題解決を図ったりする取り組みだ。勘と経験に頼るのではなく、データドリブンな人事部門へと変革するために欠かせない取り組みとして注目を集めている。

 

 三菱ケミカルは早稲田大学政治経済学術院の大湾秀雄教授が主宰する「人事情報活用研究会」に参加し、人事関連データの活用研究に取り組んでいる。ピープルアナリティクスについては6つの切り口での活用を狙う。健康経営、人材開発、人材適正配置、データ可視化、エンゲージメント、定着だ。

 例えば健康経営やエンゲージメントについては、テレワークや働き方、健康状態に関する社員調査などを基に生産性と健康状態の関連などを調べる。健康への意識が高く仕事への意識も高い部署と、健康と仕事への意識がともに低い部署など、組織別の傾向が見えた例もあり、今後の組織開発に生かす。分析データは人事ダッシュボードとして社員に提示する方向でプロジェクトを進めている。

 定着については、「こういった傾向のある人は退職しやすい」など社員の退職要因を分析して、該当する社員の定着サポートに生かす。リテンション(人材の確保・維持)分析などと呼ばれる取り組みだ。

 人材適正配置では人材リコメンドシステムの開発を目指す。社員の経歴や保有資格などのデータと、ジョブ型人事における職務記述書の情報を基に、その人に合う職種や身につけるべきスキルをレコメンド(推奨)する仕組みなどを想定する。

 一連のデータ活用については利用目的や範囲を明確にしたうえで本人の同意を得るなど取り扱いに注意する。労使双方が最大の効果を得られるように努める。例えば退職率を算定した際に、数値の高い人が異動や評価で不利にならないようにする。

5段階でアナリティクスを推進

 三菱ケミカルは5つのフェーズに基づきピープルアナリティクスを推進している。フェーズ1はデータ分析環境の整備と構築だ。機械学習などの処理に適したプログラミング言語の「Python」や統計分析ソフトの「R」、BIツールなどを導入済みだ。

 フェーズ2は分析環境を使ったデータ収集と可視化である。可視化したデータを使っての分析がフェーズ3であり、現在はフェーズ3の段階にあるとの認識だ。次のフェーズ4ではデータによる予測に臨む。先に述べた人材リコメンドのほか、休職者の予測などを視野に入れる。

 フェーズ5として目指す最終形は「データドリブン」だ。分析や予測に基づき、具体的な人事施策を立てて実行していく。従業員自らがデータを活用して自律的に行動できる組織を目指す。

 様々なデータを集めて分析することにより洞察を得て、それを基に新たな計画を立てて実行していく――。データを基にした企業活動が人事部門にも広がり、企業の競争力を左右する時代に突入しつつあると言えるだろう。

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