「隠れ残業」と「隠れ出社」の類似性

 経営者の思いや発言だけが先行して実態を伴わない、「テレワーク劣等生」とも呼べる企業は実在する。

 「社外向けには在宅勤務を徹底すると発表しているが、実態は現場任せです。ある事業所では既に新型コロナの感染者が発生しているにも関わらず、異なる建物に入る事業部は社員に出勤指示をしています。上司は正しい判断をせず、担当者が感染の不安を持っているのに出勤を指示し続けています」

 日経BP総合研究所イノベーションICTラボがビジネスパーソン3000人を対象に4月に実施した「新型コロナ対策テレワーク実態調査」の自由意見に寄せられた声である。

 ここまで読んで、勘のいい読者はお気づきだろう。

 新型コロナの問題が表面化する1~2年ほど前、働き方改革という名の下で残業時間の削減キャンペーンを打ち出す企業が相次いだ。2019年に働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限規制などが設けられたのがきっかけだった。

 残業時間を上限の月45時間より少なく抑えるために、多くの企業は社員に定時退社を促した。一方で仕事の量やアサインは見直さずに、業務改革まで踏み込まない会社が少なくなかった。社員が仕事を自宅に持ち帰ってこなす隠れ残業につながった。

 昨年の「早く帰ろう」キャンペーンと、今の「家で仕事をしよう」運動。どちらも一見すると社員のことを考えているようだが、掛け声だけならどちらも社員に無理難題を押し付けているにすぎない。

 在宅勤務比率の数値目標を決めても、IT導入やルール整備などの改革が伴わなければ逆効果である。人事部門は課題の本質を見極めたうえで、IT部門などと連携しながら行動に移すべきだろう。