人事戦略の現状と今後あるべき姿を探る

 セミナー後半ではパネリストとして松本氏、山本氏、そしてKDDI理事コーポレート統括本部人事本部長の白岩徹氏を迎えてのパネルディスカッションが開催された。モデレーターは日経BP総研 HR人材開発センター長の大塚葉が務め、「企業の成長を促す経営者視点の人事戦略とは?」をテーマに討論を進めた。討論開始に先立ち白岩氏から、「KDDIのエンゲージメントに関する取り組み」と題してプレゼンテーションが行われた。

エンゲージメントは「人事最大のミッション」

 KDDIの前身である第二電電(DDI)出身の白岩氏は、事業拡大に伴って重要性を増しつつある社員エンゲージメントの取り組みを紹介した。同社では社員エンゲージメントを「組織や仕事に対する自発的な貢献意欲」と捉え、持続的成長の原動力として位置づけている。

 同社の人事戦略テーマは「自律と責任」。通信事業の業績向上が最優先だった時代を経て、同社はライフデザインなど新たな事業領域拡大に注力している。社員の主体性・生産性を高めることで、自己の成長と会社の持続的成長につなげるのが戦略の基本だ。

 「エンゲージメントは会社の将来を左右します。その向上は人事に課された最大のミッションです」(白岩氏)。競争激化するビジネスシーンでの生き残りを賭けた、強い意気込みが感じられる。

KDDI理事コーポレート統括本部人事本部長 白岩徹氏
1991年第二電電株式会社(DDI、現KDDI)に入社。営業、カスタマーサービス部門を経て、コーポレート統括本部 総務・人事本部 人事部長、副本部長などを経て2019年から現職。

 同社では、若手社員を主な対象にしたエンゲージメント向上活動「I×H(Ignition×Harmony)プロジェクト」を展開している。自分のキャリアを考え始めるための自律的な取り組みとして主催した「キャリアデザイン会議」では同社高橋社長が自らのキャリアを振り返り、300人の社員に語りかけた。

 また社内カウンセラー制度を設立し、社員のメンタルヘルスや労働時間管理を支える活動も開始した。46人のカウンセラーはすべて管理職で、年2回のペースで全社員と面談。個々の人間関係や勤務状況などを傾聴して問題解決をはかっている。他にも全社一律のドレスコード廃止、テレワーク(在宅勤務)環境整備の充実による利用者の拡大、2020年度にはオフィス内全面禁煙の実施など、様々な角度からワークスタイル変革に取り組んでいる。

 「大きな夢、希望を持って入社した社員が数年後、すっかりやる気を失っている姿を見るのは残念です。彼らの能力を引き出せないのは、人事にも責任がある。会社の風土、文化、意識を変えるための活動を続けていきます」と、白岩氏はエンゲージメント推進役としての抱負を語った。