2020年10月26日、「日経BPダイバーシティトップセミナー2020(主催:日経BPマーケティング、共催:日経BP総合研究所)」が開催された。新型コロナウイルスの影響で、リモートワーク浸透や対面営業の制限など、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化した。初のオンライン開催となった本セミナーでは、ポーラ代表取締役社長の及川美紀氏による基調講演、中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授佐藤博樹氏の特別講演に続き、日立製作所人財統括本部人事勤労本部ジョブ型人財マネジメント推進プロジェクト企画グループ長の岩田幸大氏を交え、「ニューノーマル(新常態)時代の働き方、組織の在り方」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。(取材・文=林達哉、撮影=稲垣純也)

 冒頭で「コロナ禍に加速するダイバーシティ経営」をテーマに基調講演を行ったポーラの及川美紀社長は、ダイバーシティ経営がこれまで以上に求められている理由を3つ挙げた。

 1つはリモートワークの普及。働く時間と場所の制約がなくなり、実力を発揮できる社員の幅が広がったこと。次に在宅時間の増加により自身の仕事を見直す動きが出てきたこと、さらに従来の同調的な思考では生まれなかった新たな考え方や挑戦が、先の見えない時代だからこそより必要になったことを挙げた。「コロナ禍で個人や個性の重要性が高まると同時に、会社組織として成果を出すことの意義も大きくなっているため、今こそダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に注力している」と述べた。

ポーラ代表取締役社長 及川美紀(おいかわみき)氏 <br/>1991年、東京女子大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。販売会社に出向し、美容スタッフ・ショップの経営をサポートする埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を歴任。2012年に商品企画・宣伝担当の執行役員、2014年に商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当の取締役就任。2020年1月から現職。
ポーラ代表取締役社長 及川美紀(おいかわみき)氏
1991年、東京女子大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。販売会社に出向し、美容スタッフ・ショップの経営をサポートする埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を歴任。2012年に商品企画・宣伝担当の執行役員、2014年に商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当の取締役就任。2020年1月から現職。

 ポーラのダイバーシティ推進は、4つのステップで展開している。ステップ1では「育児に関わる女性の継続就業」をテーマに人事制度、上長意識、バックアップ体制の改革を実施した。ステップ2では「制約がある社員の活躍」として育児や介護、病気などに対応した施策を展開。ステップ3では成長機会の充実と働き方改革を推進する活動「すべての社員の活躍」を行い、ステップ4で「変革を生み出す企業へ」として、組織を横断して“ありたい姿”に向かう取り組みを続けている。ポーラが大切にする独自の価値として、同氏は「Science. Art. Love.」という言葉を紹介した。「Scienceは好奇心と挑戦、Artはゼロから1を生み出す力、Loveは人や環境に愛を持って接するD&Iを示しています」(及川氏)。

 ダイバーシティ推進に当たり何より大切なものとして、同氏は「上長の意識改革」を挙げた。「どんなに優れた制度を作っても、管理職の意識が変わらなければ社員は活用できない。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を自覚して、当社にとってD&Iがいかに重要かを理解することが必要」(及川氏)。現在、同社従業員の約75%は女性だが、女性管理職は約30%、女性役員は約40%となっている。同氏はこの数字を「まだまだ通過点」と指摘し、同社がめざす社会概念「誰もが美しく生きることができる社会」に向けて、取り組みをさらに強化すると話した。

 同社では2025年までの達成目標として女性管理職比率50%、男性育児休暇取得100%、男性ビューティーカウンセラーの採用を掲げている。「D&Iの先には、可能性の拡張がある」と同氏は述べ、基調講演を締めくくった。