HR領域にもテクノロジーを活用した戦略が必要

 続いて、村田製作所IoT事業推進部データソリューション企画開発課の中島彰氏が「センシングプラットフォーム“NAONA(ナオナ)”を活用した採用面接」と題して、人事部門での取り組みが新事業に発展したケースを紹介した。

 長年人事に携わってきた中島氏は、今後は人材マネジメントにもテクノロジーとアナリティクスを活用した戦略性が必要になると考えたという。そこで、会話の音声情報からコミュニケーションの状態を客観的なデータで可視化する自社技術・センシングデータプラットフォームNAONAを開発し、採用面接に導入した。

“NAONA”を活用した採用面接について説明した村田製作所IoT事業推進部データソリューション企画開発課の中島彰氏

 面接の質の高さは、応募者の意欲や満足度につながる「動機付け」と、採用側が必要な情報を獲得できたかどうかの「見極め」の度合いで測ることができる。動機付けと見極めの両方の度合いが高くなるような面接が理想的だと中島氏は説明する。

「発言のテンポ(1回あたりの発言の長さ)や感情値などから、共感度や両者の関係性が読み取れます。3カ月間の実証実験の分析結果から各面接官の傾向を把握することができたので、それをフィードバックして面接官のスキルアップに役立てています」。この試みは、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の「Digital HR Competition 2019」でグランプリを受賞し、現在は会社の新事業としてHR領域はもとより、上司と部下の1on1面談や営業、商談の見える化などへの活用が検討されている。

 参加企業からは、面接の録音とプライバシーへの配慮について質問が寄せられ、中島氏は「面接前に承諾はとりますが、音声そのものは録音していません。“NAONA”はセンシングした数値データだけをクラウドにアップする仕組みで、会話の内容はまったく残りません」と回答した。

 講演後は、竹林氏、中島氏への質疑応答に続いて、参加企業のイノベーション施策の成功・失敗例を題材にグループワークを実施。テレワーク時代のコミュニケーションでは「雑談」が生まれにくいといった課題や、外部からの刺激をどう取り入れるかなどについて様々な意見が出された。竹林氏が、これからの働き方として提唱する「4つのしごと(私事・仕事・志事・使事)」には、大きな賛同の声が上がった。

 また、グループワークでは実際に“NAONA”を使ってディスカッションの様子を録音、各自の発言回数や発言時間の長さなどから、ディスカッションの質の分析結果を体験した(下の図)。

ディスカッションの様子を“NAONA”で分析した結果。上は話者の1回の発言の長さ、下は各種データから判定した話者の発話スタイル。

 最後に「イノベーションの原点は人。信念を持ってやり続ければ賛同者が集まる。これまでの経験を生かして、イノベーションが起きていく仕組みを体系化したい」(竹林氏)、「他部署の人と話す、異分野の人が集まる会に顔を出すなどして、新しいインプットを得ることがイノベーションの起爆剤になる。ぜひ新しい採用の形を作っていきたい」(中島氏)と今後の抱負を語り、フォーラムを締めくくった。