2021年11月25日にオンラインで開催された「ピープルアナリティクス・カンファレンス2021」(主催・日経BP 総合研究所、協力・ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会)のパネルディスカッションに、一橋大学大学院の円谷昭一氏とFWD生命の樋口知比呂氏が登壇。ステークホルダー資本主義の中での経営陣や従業員への要請の変遷、経営資源としての人的資本の位置づけなどを議論し、人的資本価値を高めるためにどのような人材戦略が必要かを探った。モデレーターは、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の研究員を務める小澤ひろこ氏が務めた。(取材・文=加納 美紀)

持続可能な社会の実現も企業の役割に

 モデレーターの小澤ひろこ氏は、2012年から国際統合報告書評議会の日本事務局を務めている。最初に、同氏が人的資本経営と情報開示の世界的な潮流について、実例を交えて次のように解説した。

「現代は、温室効果ガスの排出量削減やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など変革が求められており、新しい挑戦を始めるために必須となる人的資本への関心が高まっている。例えば、米国では資産運用会社であるブラックロックのCEO(最高経営責任者)、ラリー・フィンク氏が2019年に投資先企業に『企業の存在意義は自社の利益追求ではない。企業理念と収益は表裏一体。労働人口の約35%を占めるミレニアル世代が、より良い社会作りに注力すべきだと考えており、ESG(環境・社会・ガバナンス)の要素がますます重要な意味を持つようになる』というメッセージを出したり、ビジネス・ラウンドテーブル(日本の経団連にあたる組織)も『株主第一主義を見直し、従業員や地域社会利益を重視した経営に取り組む』と宣言したりしている

 日本でも2025年以降はミレニアル世代が労働人口の半数以上を占めるようになるがこの世代は経済成長が実感できなかったり、SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティーを強く意識しているなど、これまでの世代とは価値観が大きく異なる。また、企業情報開示を専門に扱う独立機関・英国ファイナンシャルレポーティングカウンシルもステークホルダー資本主義に大きくかじを切ったと発表しており、持続可能な社会の実現をけん引する役割が企業に求められている」

小澤 ひろこ 氏
小澤 ひろこ 氏
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 研究員

 実際、欧米の機関投資家を中心に人的資本の情報開示を求める動きが強まっている。こうした流れを受けて小澤氏は「伝統的な人事の業務の枠を超え、テクノロジーを活用した新しい形の人事の取り組みが求められている」と語った。

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