2021年11月25日にオンラインで開催された「ピープルアナリティクス・カンファレンス2021」の中から、慶応義塾大学大学院とLINE、カオナビからHR Techとエンゲージメントに精通した識者を招いたパネルディスカッション「ハイエンゲージメントな組織デザインに向けた人事データ・HR Tech活用」を振り返る。モデレーターはピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員である古川琢郎氏が務めた。(取材・文=池谷 つばさ)

ハイエンゲージメントな組織づくりには何が必要か

 パネルディスカッションの前半では、ハイエンゲージメントな組織作りを進める上でどのような取り組みが必要か、またその中で人事データやHR Techをどのように活用すべきかなどを、登壇者が説明した。

 慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任助教の佐藤優介氏は「エンゲージメント向上においてはマネジャーのリーダーシップに注目すべきだ」と指摘した。リーダーシップには自ら組織の先頭に立って部下を導く「変革型リーダーシップ」や、部下を後方から支援する「サーバント型リーダーシップ」の2種類などがある。これらはいずれも従業員の熱意や活力の指標である「ワークエンゲージメント」の向上に貢献することが学術的にも指摘されている。佐藤優介氏は、これらに代表されるようなマネジャーのリーダーシップを高める仕組みづくりが大切だとして「このために、人事データやHR Techを用いて、科学的な組織デザインを進めることが大事だ」と語った。

佐藤 優介 氏
佐藤 優介 氏
慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教

 次に、LINEのHR Data Managementチームに所属する佐久間祐司氏は、エンゲージメントの変化は「極めて個人的な体験によって引き起こされる」という考えを述べた。そのことを示すデータとして、LINEとヤフーを中核とするZホールディングスの経営統合発表時と、LINE社内のマネジャー交代時のエンゲージメントスコアを紹介した。前者では発表前後でスコアにほとんど変化は生じなかったが、後者は交代前後で大きく変化するケースがあったという。

 こうした結果から、佐久間氏は「業務変化を具体的にイメージできなければ、経営統合という大きなイベントがあってもエンゲージメントは変わらない。むしろ日々の業務実態や所属チーム、上司との関係性がエンゲージメントに大きく影響するのではないか」と分析する。

佐久間 祐司 氏
佐久間 祐司 氏
LINE Employee Success室 HR Data Managementチーム

 最後に、カオナビ取締役副社長兼COOを務める佐藤寛之氏は「人事データの収集に先立って、会社と従業員の間でしっかりと関係性を構築しておくべきだ」と指摘した。そもそも、集めた人事データは従業員の本音を反映したものでなければならないが、それには一定の信頼関係が必須だからだ。

 同氏は「どうしても調査を実施しただけになってしまう企業さんをよくお見受けしますが、会社自身がサーベイを通じて従業員に利益を還元できているか、従業員にそのメリットをしっかりと説明できているかを考えて、信頼してもらえるような形で取り組みを進める必要がある」と指摘した。

この記事は登録会員限定(無料)です。

登録会員お申し込み会員登録