今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。この連載では、ここで上位に入った企業・団体を中心に先進的な取り組みを紹介していく。
 今回は、2020年のDHRCの「ピープルアナリティクス部門(データ活用実践部門)」でファイナリストとなったLINEの佐久間祐司氏と田中賢太氏に話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の研究員である白石紘一氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

経営スピードに合わせて人事施策を展開したい

白石紘一氏(以下、白石): LINEがピープルアナリティクスに取り組み始めた経緯を教えていただけますか。

佐久間祐司氏(以下、佐久間): ピープルアナリティクスに取り組む企業は、何か特定の課題を解決することを目的としているケースが多いと思いますが、当社の場合は少し事情が異なります。どのような分析にも活用できるような基盤作りから着手しました。

LINE Employee Success室  佐久間 祐司 氏(撮影:編集部)
LINE Employee Success室 佐久間 祐司 氏(撮影:編集部)

 現在、LINEのビジネスは量的な拡大と質的な複雑化が急速に進んでいます。直近3年の社員の増加率が平均で30%、定期的な人事発令が年に24回といった具合に人材や組織が大きく変化しています。発令の頻度を考えると、人事が持っているデータの鮮度は半月しか保てないことになります。組織ごとに何らかの指標を算出しても、半月たったら実態にそぐわなくなるのです。

 このため、人事にとっては経営層から求められる指標を作る作業が大きな負担となり、戦略的な施策の企画・立案に振り向けられる時間があまり取れないという問題がありました。経営のスピードに合わせて人事面での施策を実施していくためには、人材と組織を常に可視化できるような基盤が必要だと判断したのです。