ピープルアナリティクスを自社の売り上げにひも付けたい

白石: このシステムを構築・運用するにあたって、どんなことにご苦労されましたか。

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 研究員 白石紘一 氏(撮影:編集部)

佐久間: 機微情報の取り扱いですね。人事情報はただでさえ個人情報なわけですが、考課情報など機微性が高いものも含まれます。統合データベースには、あらゆる人事情報が入っているので、誰にどのような権限を与えればよいのかを繰り返し見直してきました。実際、これまでにアクセス権限の種類を何度も修正してきました。この部分の運用は、ゲーム事業でお客様の情報を扱っていた田中の知見が役立っています。

田中: 「Personal Karte」では面談時や組織改編時に配下メンバーのみの閲覧を許可するという「対象の制限」、「HR Dashboards」では機微度の高い情報はデータベースに保持しないという「データ種の制限」、あらゆる情報が閲覧できる「Analysis DB」では少数のアナリストのみが権限を保持するという「権限保持者の制限」をかけています。

白石: 個人情報や機微情報の扱いは、多くの企業に共通する課題ですね。ともすると「人事情報は会社のもの」と考えて、それらの情報に対するアクセス制限を含めた、適正取扱いの観点がおろそかになってしまうケースもあります。
 佐久間さんは冒頭で、特定の課題を解決することが目的ではないとおっしゃっていましたので、システムの導入効果を評価しにくいのかもしれませんが、どのような成果があったとお考えですか。

佐久間: 定量的な効果が生まれてくるのはこれからですが、定性的な効果としては経営層や事業部門のトップからの信頼が高まったのでは、と感じています。組織や人材を手軽に可視化できるようになったことで、現場とズレの少ない会話ができるようになってきました。例えば、事業部間で比較するとこの事業ではこの階層の社員に元気がないとか、このチームには上層部の意思が届いていないのではといった課題の仮説を、組織改編にあわせて遅滞なく提示できるようになってきていて、人事による現場支援のペースアップに繋がっているのでは、と感じています。

白石: なるほど。それは人事関係者の間で注目を集めている「HRビジネスパートナー」の仕事ですね。今後は、どのようなことに取り組もうとお考えですか。

佐久間: 人事的な情報の一元化は一段落しており、今後は財務的なデータもピープルアナリティクスに生かしていきたいと考えています。例えば、どの部署でも忙しくなると「人が欲しい」との声があがりますが、内実を見ると人を増やす前に生産性を上げるべきタイミングでは?と疑問を呈したくなる場合が少なくありません。人材や組織の情報に財務的なデータをひも付けることで、人事としても今までより事業に踏み込んだ提案が可能になるはずです。こうしたことが全社的に実現できれば、より経営に資することができるのではと考えています。