今までアナログ中心だった労働市場の様々な課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこで、人材データを分析・可視化して人と経営の未来に生かすピープルアナリティクスと、それを牽引するHRテクノロジーの活用を「産・学・官」で普及・推進するために設立されたのが「ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会」だ。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、ソニーグループの人事機能子会社であるソニーピープルソリューションズの橋本征義氏、丸吉香織氏、多良啓司郎氏の3人に話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会副代表理事の山田隆史氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

 ソニーピープルソリューションズ(以下、SPPS)は、ソニーグループ各社の人事・総務領域の方針策定と施策実行を担う企業。同社の中でピープルアナリティクスを実践しているのが、人事センター内に設置された「People Intelligence and Experience Lab(通称・PIE Lab)」だ。

トップダウンでピープルアナリティクスに取り組む

山田隆史氏(以下、山田): ピープルアナリティクスを実践するには人材やノウハウ、テクノロジーなどへの投資が必要になるので、なかなか踏み出せないという企業も少なくありませんが、どのような経緯で「PIE Lab」を立ち上げられたのでしょう。

橋本征義氏(以下、橋本): 現在、ピープルアナリティクスを実践している企業はボトムアップで取り組み始めたところが多いのだと思いますが、ソニーの場合はトップダウンでスタートしました。2015年にソニーグループ全体の人事の中期計画において、テクノロジーとデータの利活用を推進することが掲げられたことがきっかけです。

ソニーピープルソリューションズ 人事センター People Intelligence and Experience Lab 長 橋本 征義 氏

 こうした計画が打ち出された背景には、人事を担当する役員の思いがありました。もともと、ソニーには「個」をとても大切にする社風があります。この役員は「事業がグローバル化する中で多様化する個々の社員に対して、やりたいことをサポートしていくには、これまでの人事モデルでは通用しない」と考えて、データとテクノロジーの利活用を進めるという方針を打ち出したのです。

 そこで、人事部門の中でもデータ活用に興味があった私が専門チームを立ち上げることになりました。データサイエンスの専門家チームが、既存の人事チームに寄り添いながら課題解決に取り組むような体制が必要だと考えて、3年前に必要なメンバーの採用活動を始めました。