今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこで、人材データを分析・可視化して人と経営の未来に活かすピープルアナリティクスと、それを牽引するHRテクノロジーの活用を「産・学・官」で普及・推進するために設立されたのが「ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会」だ。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、新卒の採用活動にピープルアナリティクスを導入しているパナソニックの坂本崇氏に話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員である佐藤優介氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

10年後も「働く場」として選んでもらえる企業へ

佐藤優介氏(以下、佐藤):採用部門の中でピープルアナリティクスに取り組んでいらっしゃるそうですが、どのような課題意識があったのでしょう?

坂本崇氏(以下、坂本):目の前の顕著な課題というよりは、将来直面するだろう大きな課題へのアプローチの一つとしてピープルアナリティクスに取り組んでいます。

 私が所属しているリクルート&キャリアクリエイトセンターの所長は「よき経営はよき採用から」という考え方を持ち、本社採用部門として当社で活躍できる人材を採用することは極めて重要なミッションだと捉えています。当社は、10年ほど前までは新卒採用市場でも人気がありましたが、社会環境や求職者の就業観の変化により、今後は人材獲得の困難化が見込まれています。10年後も「働きたい」と思ってもらえる企業であることを目指して、2017年から「エンプロイヤーブランディング」に取り組み始めました。

パナソニック リクルート&キャリアクリエイトセンター 企画部 採用ブランディング・ピープルアナリティクス課 坂本 崇 氏(撮影:稲垣 純也)

 エンプロイヤーブランディングでは、一貫性を持って、当社らしさの発信を通じた求職者に対する認知・共感の獲得を目指しています。ただ、それだけでは10年後も「働きたい」と思ってもらえる企業にはなれません。ブランディング活動を通じて求職者が抱いた当社への期待(得られる経験や環境など)が、入社後に現実となり、それがまた社外へ発信されるという循環をつくっていくことが重要です。

 大きな組織の中でも一貫した従業員体験ができるような状態にし、当社の働く場としての魅力を向上させるため、ブランディングだけではなく、データを用いたピープルアナリティクスとの両輪で進めていくこととなり、2020年7月からピープルアナリティクスの機能を持ち始めました。