「パナソニックで活躍している人」の特徴を明らかにしたい

佐藤:具体的に、ピープルアナリティクスではどのようなことに取り組んでいるのですか。

坂本:まず、入社3年目の社員を対象に実施したアンケートの分析から始めました。このアンケートでは、仕事に対するやりがいや、そこに影響すると思われる要因について設問を準備し、若年層のやりがいに関する課題の見える化をしました。テキストマイニングを活用して自由回答欄から特徴的なワードを抽出・分析したところ、やりがいを感じられていない社員は「業務量が多い」や「達成感がない」などの言葉を使用する傾向が見えたことは大きな気づきでした。

 世の中の平均よりは少ないものの、入社3年以内に当社を退職してしまう社員も残念ながらいます。より多くの社員がモチベーション高く働ける状態をつくりたいと考えてきましたが、このアンケートだけでは施策として不十分だと感じました。若年層社員のモチベーション状態を定期的に把握し、随時見えてきた課題にアプローチしていく必要があると感じたからです。そこで、1~2カ月ごとに実施するパルスサーベイを2020年9月から試験的に運用しています。

 このサーベイは、若年層社員の状態把握と同時に、マネジャーとのコミュニケーション活性化を通じた若年層のモチベーションマネジメントを目的としています。モチベーション状態は5段階で評価するのですが、1カ月単位など短期間で激しくモチベーション状態が変化する社員がいることが分かりました。今後はこのような現象が生じる背景や、部門ごとの傾向なども見ていく予定です。また、モチベーションが低い状態が続いている社員には、部門の人事と連携してメンバーとマネジャーの双方をフォローできる体制を築こうとしています。

佐藤:入社後の新入社員とマネジャーのコミュニケーションをどのようにケアしているのでしょう。

坂本:単にメンバーのパルスサーベイの回答内容がマネジャーに行くのではなく、回答内容を分析した結果を基にしたアドバイスがメンバーとマネジャーそれぞれに届くようにしています。これまでは、何か調査を実施しても人事部門の施策立案などに活用することが中心で、現場の個人へフィードバックすることはほとんどありませんでしたが、これからは個人の行動変容につながるような仕組みが大切だと考えています。

 パルスサーベイを導入してからは、実際に行動変容が起こっているのかを定期的にモニタリングしていて、マネジャーから見たメンバーの行動、メンバーから見たマネジャーの行動についての設問も設けています。

 私の持論ではありますが、メンバーのモチベーションマネジメントは本来、日頃からメンバーに接しているマネジャーが担うべき役割だと考えています。しかしながら、一人ひとりのメンバーに向き合える時間は限られています。日々の業務で忙しいマネジャーが個人に寄り添うことができるようにサポートする仕組みづくりも重要だと考えています。

パルスサーベイ回答内容を元にしたアドバイスがメンバーとマネジャーそれぞれにフィードバックされる(イメージ)
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パルスサーベイ回答内容を元にしたアドバイスがメンバーとマネジャーそれぞれにフィードバックされる(イメージ)

佐藤:それらの取り組みから得られた知見をどのように採用部門で生かすのでしょうか。

坂本:パルスサーベイのデータを活用して、配属後のマッチング状態を見ていき、求職者の共感獲得から入社後の定着までを含めた採用活動にフィードバックしていこうと考えています。パナソニックで活躍している人とその組織の特徴を明らかにしていくことで、求職者の優秀さやスキルだけを基準にするのではなく、配属先の組織とのマッチングを強化した採用活動を行いたいです。

 これまでの採用活動は、ベテラン社員の経験や勘に頼ってきました。この暗黙知をデータにより形式知化することで、ベテラン社員が抜けても採用活動の質を担保し続けられる状態を作れればと考えています。