今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。

 今回は、2020年のDHRCの「ピープルアナリティクス部門(データ活用実践部門)」でファイナリストとなったVisionalグループでピープルアナリティクスに携わっている小上馬麻衣氏と友部博教氏に話を聞いた(取材はオンライン)。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員である林幸弘氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

データに基づいてエンプロイージャーニーを一気通貫で管理する

林幸弘氏(以下、林):小上馬さんが室長を務めるタレントマネジメント室とは、どのような組織なのでしょう。

小上馬麻衣氏(以下、小上馬):Visionalグループは、ビズリーチやビジョナル・インキュベーションなど合計6社で構成する企業グループで、ホールディングカンパニーであるビジョナルは2020年2月に発足しました。この組織再編に合わせて、グループ全体の人材開発や組織開発、人事システムの管理などを担う組織として、タレントマネジメント室が新設されました。ピープルアナリティクスの機能も、この組織の中に置かれています。

 人事部門にとって「あるある」の課題なのですが、エンプロイージャーニーの中で様々な業務を担っていると、業務間で情報の流通が途切れてしまうケースがとても多くなっています。これを改善するためには、従業員の受け入れからオンボーディング、人材育成、異動・配置、退職までをデータに基づいて一気通貫で見られるような体制が必要です。こうした体制づくりの司令塔になるのが、タレントマネジメント室です。

Visionalグループ タレントマネジメント室 室長 小上馬(こじょうま)麻衣 氏

林:ピープルアナリティクスに取り組み始めた経緯を教えてください。

小上馬:これも人事の「あるある」ですが、人事施策のほとんどは効果が表れるまでのリードタイムがとても長いのが現実です。場合によっては、効果の測定が可能になるころには、その施策を立ち上げた人が異動しているということもあり得ます。

 リードタイムを短くするためには、少しずつデータを蓄積していって効果をすぐに検証できるような体制をつくることが欠かせません。DHRCで発表させていただいた3つのサーベイも、これを実現するための取り組みです。