今後の課題はピープルアナリティクスのメリットを現場に還元すること

林:ピープルアナリティクスを成功に導く秘訣は何だとお考えですか。

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員 林 幸弘 氏
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員 林 幸弘 氏

小上馬:人事と現場の従業員との信頼関係が全てだと考えています。高頻度で実施しているサーベイで現場の従業員から精度の高い情報を共有してもらうためには、人事が信頼されるしかありません。このためには、情報を共有することに対するメリットを現場に返していくことが欠かせません。

 「自分の経験やWill(意志)を登録すると、こんなに良いことがあるんだ」と現場の方々に思ってもらえるような仕組みをつくることが必要ですが、ピープルアナリティクスに取り組み始めたばかりの私たちはまだ、そこまで到達できていないと考えています。

友部:サーベイの結果をすぐにアクションに結び付けているので、マネジャーや経営層に対してはピープルアナリティクスの効果を提示できていると考えています。しかし、現段階では従業員の方々への直接的なメリットは還元できていないのかもしれません。

 従業員へメリットを還元するための理想像は「データの民主化」です。機密情報に対するアクセス権限などの課題がありますが、従業員の方々もタレントマネジメント室と同様にアナリティクスを実践できるような環境を構築するとともに、データ活用のリテラシーを底上げすることが大切だと考えています。従業員の一人ひとりが、自分のデータを登録することによって、自分のパフォーマンスやコンディションを自律的に管理・改善できるような仕組みが理想です。

小上馬:従業員一人ひとりが、自分や組織のコンディションを常に把握して、自分と組織をもっと良くするにはどうすればよいのかを考えて行動する――。これが、私たちが実現したい世界観です。組織や他人を含めた個人の情報に常にアクセスできて自分事として考えて、改善のためにアイデアを出し合うような世界を目指したいですね。ピープルアナリティクスの進展によって日本中の企業が、これを実現できればよいなと思っています。