今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、データに基づいて優秀なマネジャーの特性を可視化する「Fujitsu Management Discovery」に取り組む富士通の佐竹秀彦氏と堀口有吾氏に話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員である入江崇介氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

統計学を人事部門の基本的なスキルに

入江崇介氏(以下、入江):2018年度から人事部門でデータ分析に取り組んでらっしゃいます。経緯をお聞かせください。

佐竹秀彦氏(以下、佐竹):大きく2つの要因があります。現在、富士通は中期経営計画(2019~2022年度)でも掲げているように、「IT企業」から「DX(デジタルトランスフォーメーション)企業」へ転身するという目標を打ち出しています。このため、どの部署でも「データドリブン」が重要なキーワードとなっているのですが、人事部門には大量のデータが存在しているのにあまり活用できていないという問題意識がありました。データに基づいた人事施策を打ち出すことで、社内実践の先駆者となり得ると考えました。

 もう一つは、人事部門が果たす役割の変化です。急激に変化する経営環境の中で企業が成長していくためには、従業員の意識と行動を変える、そして組織風土を変えることが必要です。これを主導することが、人事部にとって極めて重要な役割になってきました。

 富士通の従業員は約6割がエンジニアのため、施策の根拠を論理的に示せば前向きに捉えてくれる人が多くいます。ファクトやエビデンスを示すことで、各種取り組みの説得力が上がるのです。そこで、これまでの勘や経験、関係性といった人事部門の働き方に加えて、統計学を人事部門の基本的なスキルにしていく必要があると考え、ピープルアナリティクスに取り組むことを決めました。

富士通 Employee Success本部 Engagement & Growth 統括部長 佐竹 秀彦 氏