今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)を活用して人材育成に取り組む日産自動車に話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の代表理事である長瀬昭彦氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏、写真撮影=稲垣 純也)

積極的に教育を受けて成長していくプロセスを作りたい

長瀬昭彦氏(以下、長瀬):約200人が在籍する商品企画部の人材育成でピープルアナリティクスに取り組んでいるそうですが、その経緯をお聞かせください。

佐々木英王氏(以下、佐々木):私たちの仕事は、5年後や10年後に売れるクルマを企画することです。このためには、将来を予測したり、お客様の心の中を読んだりすることが求められます。

 さらに、こうして思い描いた企画をデザイナーやエンジニアに伝えることも重要な役割です。一言で「格好良い」といってもいろいろな格好良さがありますし、「速いクルマ」といっても加速の仕方でクルマの特性は大きく変わってきます。いくら良い企画が思い浮かんだとしても、具体的な目標性能や形に落とし込めなければ、ビジネスにはつながらないのです。

 従来は、こうした仕事をこなすための方法論が属人的な暗黙知になっていました。これを形式知に変換して共有できるようにしたいと思ったのが、そもそもの始まりです。データに基づいて、部内の人間がどんどん教育を受けて、その結果としてどんどん人が育って、ビジネス上のアウトプットに結び付ける――。こういうプロセスを実現したいと考えて人事部門に相談しました。

日産自動車 商品企画本部 商品企画部 セグメント・チーフ・プロダクトスペシャリスト 佐々木 英王 氏