今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、人事業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組んでいるNECに話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会副代表理事の山田隆史氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏、写真撮影=稲垣 純也)

自社のDXで生まれた成果を顧客企業に還元

山田隆史氏(以下、山田):世界中の企業がDXに取り組んでいますが、ほかの部門に比べて人事の領域では取り組みが遅れているのが実情です。こうした中で、人事のデジタル化を加速させているのには、どのような背景があるのでしょうか。

海老沼貴明氏(以下、海老沼):NECは2025年度までの中期経営計画の中で、重点テーマの一つに「コアDX」を掲げています。これには「コーポレートトランスフォーメーション」(NEC内部のDX)をベースとして、その成果をレファレンスとしてお客様に提供するという戦略が含まれています。この戦略に基づいて、人事の領域でもDXを推進しています。現在、人事に関するデータを収集・分析する環境が整ってきたところです。

 今後は、様々な側面でピープルアナリティクスに取り組むことによって、人事業務の高度化につなげていきたいと考えています。具体的には、人事業務における「公正」(勘や経験にとらわれることなく、データを基準として公正に判断する)と「再現性」(判断の軸や基準を共有することで、人に依存することなくサービスを提供し続ける)を実現することです。この結果、業務が可視化されることによってRPA化やアウトソーシングが可能になり、人事部門の社員がより高度な業務に集中できるようになります。

山田:人事のDXの一環として、ピープルアナリティクスに取り組んでいるわけですね。

海老沼:人事部門の役割は、経営戦略をブレークダウンして、ビジネスの成長のために人事領域でできることを一番良い方法でスピード感を持って実行することです。これを科学的な見地から実現するのがピープルアナリティクスだと考えています。

NEC 人材組織開発部 主任 海老沼 貴明 氏