今までアナログ中心だった労働市場のさまざまな課題解決に最新のテクノロジーを導入することで「組織・個人のパフォーマンスの最大化」を目指す企業や団体が増えてきた。ただし、テクノロジーを導入したものの、成果に結び付けられているところが多いとはいえないのが現実だ。そこでピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は、テクノロジーを活用して日本の企業・団体の生産性を向上させることを目的に掲げて、2018年から「Digital HR Competition(DHRC)」と名付けたコンペティションを開催している。

 この連載では、同協会の研究員がピープルアナリティクスで先進的な企業・団体の担当者に話を聞いていく。今回は、人事に関する様々な情報をデータレイクへ収集し、これをデータマート化して社内に公開しているNTTコミュニケーションズに話を聞いた。聞き手は、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員である林幸弘氏が務めた。(構成=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

リモートワーク率80%を実現

林幸弘氏(以下、林):御社のヒューマンリソース部(HR部)において、ピープルアナリティクスに取り組み始めた経緯を教えてください。

山本恭子氏(以下、山本):ワークスタイル変革としてリモートワークネイティブな働き方を推進していく中で、データに基づいた経営が必要だと考えてピープルアナリティクスに取り組み始めました。このことをご理解いただくために、当社におけるリモートワークの歴史をお話ししましょう。

 当社は約20年前の2002年から、経営判断として「eワーク」と名付けたリモートワークのトライアルを開始しました。以来、地道にワークスタイル変革に取り組んできました。2007年には、育児・介護事由に限定した本格運用を開始しました。当時は、今ほどITツールが充実していなかったのでセキュリティー対策や制度面の整備で苦労の連続でした。利用する社員や上司の意識、組織の風土も追い着いていませんでしたしね。

 2017年3月に政府の働き方改革実現会議が「働き方改革実行計画」を決定したことを受けて、「個人の『ライフ』の充実があっての『ワーク』の充実」を基本理念として、「風土・意識」「制度・ルール」「環境・ツール」の三位一体でワークスタイル変革を強化し、この年の10月に育児・介護という事由を撤廃するとともにリモートワークの対象を約6000人いる全社員に広げました。コロナ禍の2020年2月には派遣社員の方も含めて全面的にリモートワークに移行しました。2020年4月から現在までリモートワーク率は80%を維持しています。

山本 恭子 氏
山本 恭子 氏
NTTコミュニケーションズ 執行役員/ヒューマンリソース部長(写真提供:NTTコミュニケーションズ)