組織がイノベーションを生み出す上で注目されているのが、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進性だ。日本においては女性管理職3割の実現が先送りされるなど課題も多いが、男性比率が高いと言われる製造業ではなおさらとの声もある。独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催したイベント「新価値創造展2021」(2021年12月、リアルとオンラインで開催)では、日米のD&I先進企業である味の素とジョンソン・エンド・ジョンソンの推進リーダーが登壇し、製造業におけるD&I推進の取り組みや課題、展望を語った。聞き手は日経BP総合研究所Human Capital Online発行人小林暢子が務めた((取材・文=浅井 美江)。

 ――会社としてD&Iをどのように捉え、取り組んでいるか。

味の素 小池 愛美氏(以下、小池):味の素社では会社が持続していく成長の鍵は人財にあるとしてD&Iを「重要な経営戦略」と捉え、経営トップ自らが積極的に社内外に発信している。2008年から第1フェーズを開始。主に女性を対象として育児休暇や時間単位有休などに取り組んだ。2015年からの第2フェーズで対象を全従業員に広げ、2017年には週4日はオフィス以外でも働ける「どこでもオフィス」、所定労働時間短縮と朝方シフト(8:15~16:30)を実現した。誰もが活躍できる環境を整えて現在は第3フェーズに取り組んでおり、D&I推進チームは8名のうち6名が専任。一人ひとりのキャリアをつなぎ活かせる環境づくりを目指している。

味の素 コーポレートサービス本部 人事部 人財開発グループシニアマネージャー 小池 愛美氏(写真提供:味の素)
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味の素 コーポレートサービス本部 人事部 人財開発グループシニアマネージャー 小池 愛美氏(写真提供:味の素)

ジョンソン・エンド・ジョンソン 大多和 裕志氏(以下、大多和):当社は1943年の創業当時から、会社の責任として社員一人ひとりの多様性と尊厳を尊重し、価値を認めることを「我が信条(Our Credo)」にもうたっている。D&Iはビジネスの成功に重要な推進力と捉えており、2021年からはD&Iにエクイティー(公正)の重要性を加味、“DE&I”として推進。マネジメントによるコミットメント、人事面でのサポート、ERG((Employee Resource Group、社員の自発的なグループ)の3つの活動をエンジンとした推進体制を構築している。ERGの活動に関しては業務時間の10%を就業時間内における活動が認められている。

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー バイオセンス ウェブスター事業部 営業部 営業本部長 大多和 裕志氏(写真提供:ジョンソン・エンド・ジョンソン)
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ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー バイオセンス ウェブスター事業部 営業部 営業本部長 大多和 裕志氏(写真提供:ジョンソン・エンド・ジョンソン)

課題解決には丁寧なコミュニケーションや研修を利活用

 ――D&Iを推進する上での課題と解決方法についてどう考えているか。

小池:課題の1つがアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)。各人が培ってきた経験則は役立つこともあるが悪さをすることもあるため、コントロールできるよう外部講師やe-Learningとワークショップによる研修を実施し全社で取り組んでいる。製造現場でのリモートワークは不可能と言われるが、スマートフォンなど既存のツールを活用した監視体制を構築、また自然災害時等に備え最低限の従業員出社で生産を確保するために安全性や生産性をいかに維持するかを考慮している。エクイティーへの取り組みは本格的にはこれからだが、すでに従業員のeラーニングでは日英の字幕を付けるなどして、英語が理解がしやすい人や聴覚に障がいのある人など全員が同じスタートラインに立てるようにしている。

大多和:エクイティーという面で、女性の管理職を増やすために下駄を履かせているのでは?と一部の男性社員からコメントが上がることもあるが、昇進における基準やプロセスをしっかり説明して、公正性を担保した取り組みについて理解促進に努めている。リモートワークは当初、出勤・在宅による不公平感の拡大が懸念されたが、個々の状況によって一律ではないことがわかってきた。一人ひとりの状況に応じてしっかりコミュニケーションを取ることが大事と考えている。アンコンシャス・バイアスについては、様々なトレーニングを用いて再認識を促している。自分自身でも意外な認識が発見でき、効果はあるとみている。