2021年は日本企業にとって「人的資本経営」の勝負の年になる。昨年8月、米国証券取引委員会(SEC)による人的資本の情報開示の義務化により、欧米企業はいち早く対応を進めてきた。世界的な潮流を受け、人材マネジメントで後れを取る日本企業も対応を迫られる。人的資本とは何か、どのように情報開示すべきか? ガイドラインである国際規格「ISO30414」の概要、日本のCHO/CHROに求められることなど、人的資本経営のポイントと指標を「Human Capital Online」の記事で総ざらいする。

(写真:123RF)
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 「まるで黒船がやってきたようだ」、そう語る日本のCHO/CHROもいる。人的資本の情報開示が、にわかに世界的な潮流となっている。人材マネジメントで世界に後れを取る日本企業も対応を迫られる。

 きっかけは2020年、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務づけると公表したことだ。8月26日に発表し、11月9日には新しい規則が発効した。

 これに先立ち欧米では数年前から、機関投資家が企業に対して財務諸表以外の情報、すなわち人的資本の情報開示を求めてきた背景がある。例えば米ブラックロックでは、2019年から投資先企業に対する優先事項の1つに人的資本を組み入れている。SECによる情報開示の義務化は、この流れを大きく後押ししたことになる。

人的資本の情報開示、ついに義務化! 米SECが8月末に発表

 なぜ今、人的資本が注目されるようになったのか。
 2008年のリーマン・ショックを契機に「財務諸表のみで企業価値を評価すること」に警鐘が鳴らされ、投資家が企業への投資プロセスにESG(環境・社会・ガバナンス)評価を導入する流れが生じた。知的財産や企業文化が新たな経営資源として注目され、これらを重視する人的資本経営が、持続的な企業価値向上の取り組みの指標となってきたのだ。

「人材マネジメント後進国」日本でも、早急な対応が迫られる

 こうした流れに対し、欧米企業の対応はかなり進んでいる。2019年時点で「Fortune100」にリストされたほとんどの企業が、既に人的資本の情報開示を行っている。またSECの動きを受け、2020年11月までに提出された上場企業149社の78%の年次報告書で、人的資本に関する定性的/定量的な指標による情報開示が認められた。自社のWebサイトにHRリポートを発表する企業も多い。

米国では149社が人的資本を開示、コロナ禍で企業の対応が試される

 一方で、連載「今こそ、人的資本経営」で取材してきた有識者の多くは、日本企業の対応の遅れに警鐘を鳴らす。終身雇用、年功序列など旧態依然とした日本型雇用からの脱却を促し、従業員一人ひとりの幸せやエンゲージメント向上を重視した人材マネジメントの必要性とともに、人的資本経営の重要性を指摘する。

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