2021年9月28日、日本経済新聞社と日経BP 総合研究所は「CHO Summit 2021 Autumn 個を活かし、輝く組織へ」(協力・Human Capital Online)をオンラインで開催。先進的な人材マネジメントを行っている企業のトップや最高人事責任者(CHO/CHRO)、有識者が集まり、最先端の人材戦略と取り組みについて語った。その中から、日本経済新聞社で人的資本経営のトレンドに詳しい2人による対談「変革の時代における経営を舵取りする『次世代経営者』育成に今、必要な観点とは」を振り返る。(取材・文=平沢 真一、撮影=川田 雅宏)

スキルマトリックスの前にまず経営戦略ありき

 本セッションの第1部では、日本経済新聞社で編集委員を務める石塚由紀夫による講演「変革の時代における経営を舵取りする『次世代経営者』育成に今、必要な観点とは」が行われた。冒頭、日本経済新聞の人気コラム「私の履歴書」をひも解きながら、日本企業の社長の選ばれ方を検証。多くのトップが「晴天の霹靂」で誕生しているエピソードを紹介し、日本企業のトップの多くは先代トップの禅譲で決まっており、企業戦略に基づく後継者育成プランが機能していないことを指摘した。

石塚 由紀夫
石塚 由紀夫
日本経済新聞社 総合解説センター 編集委員

 2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改定で、新たに「経営トップの後継者計画の策定と運用」が盛り込まれた。同時に「取締役会メンバーのスキルマトリックスを取締役選任の方針・手続きと併せて開示すること」が求められている。ところが、今年春に行われた経済産業省の調査では、後継者計画を立案している企業はわずか4分の1。スキルマトリックスの作成に必要な取締役のスキル評価基準を策定している企業は3割にとどまる。国内企業の取り組みが追いついていない現状が明らかになった。

 石塚は資生堂、第一三共、三菱ケミカルホールディングス、SOMPOホールディングスの先進的な取り組みから、スキルマトリックスの具体例を解説。資生堂は取締役会メンバーに求める5つのスキルを明示し、各取締役が有するスキルをマトリックスにしてホームページに公開している。同様に、第一三共は9項目、三菱ケミカルホールディングスは7項目、SOMPOホールディングスは9項目をそれぞれ設定してスキルマトリックスを公開している。

 「重要なのは、スキルマトリックスは単に取締役が持つスキルをまとめた表ではないという点だ」と石塚は強調する。「先に会社としての経営戦略があり、そのために必要な経営者のスキル要件を明確にする。それに照らして、現在の取締役会メンバーの状況をまとめたものがスキルマトリックスだ」と述べた。取締役のスキル要件を明確にすることで、取締役の選定基準や育成プランも明確になる。

 次に、SOMPOホールディングスの事例を基に「後継者計画の策定方法」を解説した。同社はグループ全体で81の重要ポストを明らかにし、各ポストに5年以内に就く候補者を5人以上、5~10年以内に就く候補者を5人以上、それぞれリストアップしている。「5年後、10年後の候補者を選定し、必要なスキルを身に着けさせるための育成プランを策定・運用している」と説明した。

「出世に興味がない若手」をどう育てるか

 ここで石塚は「難しいのは、ミレニアル世代の若手社員は必ずしも組織の一員として成長することに関心がない点だ」と指摘。簡単に言えば「出世に興味がない」のだが、ビジネスパーソンとしての成長意欲はむしろ旺盛だ。

 そこで、副業の解禁や自社に在籍しながらベンチャーで働くことができる「レンタル移籍」など、モチベーションを高めるための様々な取り組みが進められている。本人が望むスキルの習得に加え、いわゆる「修羅場体験」を積ませることで、若手の成長意欲をうまく刺激し、経営人材の育成につなげていこうとしているのだ。「本人の内発的な動機づけにいかに訴えかけられるかが、若手の成長を促し、定着度を高めるための要点になっている」と語って、講演を締めくくった。

この記事は登録会員限定(無料)です。

登録会員お申し込み会員登録