2021年9月28日、日本経済新聞社と日経BP 総合研究所は「CHO Summit 2021 Autumn 個を活かし、輝く組織へ」(協力・Human Capital Online)をオンラインで開催。先進的な人材マネジメントを行っている企業のトップや最高人事責任者(CHO/CHRO)、有識者が集まり、最先端の人材戦略と取り組みについて語った。その中から、三井住友トラスト・ホールディングスで執行役専務を務める井谷太氏の基調講演「パーパス実現に向けた人的資本のバリューアップ~『専門性』と『総合力』の追求による付加価値の創出~」を振り返る。(取材・文=加納 美紀、撮影=川田 雅宏)

井谷 太 氏
井谷 太 氏
三井住友トラスト・ホールディングス 執行役専務

専門性と総合力の合わせ技で強みの領域を拡大

 銀行・資産運用・資産管理・不動産業務などを融合した専業信託銀行グループである三井住友トラスト・グループは、多くの領域で業界トップクラスのステータスを誇り、専門性と総合力を発揮して強みの領域を広げている。同社では「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」というパーパスを軸に、専門人材集団がさらに高い付加価値を提供できるよう、人的資本のバリューアップに取り組んでいる。人事部を中心に経営企画なども担当し、総合力の発揮や具体化に取り組んでいる執行役専務の井谷太氏が、同社の人材戦略を解説した。

 世界的なSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)の潮流、新型コロナウイルスの感染拡大など時代が急速に変化する中で、三井住友トラスト・ホールディングスは日本で唯一の専業信託銀行グループとして社会に貢献していくことを目指している。井谷氏は次のように説明する。

「顧客ニーズの複雑化や高度化に対処するには、専門性の深掘りと総合力の強化がポイント。そのためには、組織として権限や各種資源配分面での工夫と強力なリーダーシップが必要だ。人材面では専門性と総合力を併せ持つT字型またはπ字型人材の育成が必要になる」

 具体的には、2020年度に策定した中期経営計画の中で、π字型人材の育成や活躍拡充に向けた5つの人材戦略推進を掲げたという。

 井谷氏は、1つ目の戦略「人材育成」の柱として、社内大学「SuMiTRUSTユニバーシティ」の高度化について説明。例えば、グループ内の有識者の知見をセミナー形式で展開し、知的資本の拡大と蓄積を図るのが「ナレッジ・シリーズ」。サステナビリティー業務を統括するフェロー役員によるESG、SDGSの最新動向セミナーには応募が殺到し、6カ月の年金基礎講座は約400人が受講したという。「学びの風土醸成だけでなく、人と人が出会って化学反応を生み出すプラットフォームにしたい。将来的には他社の社内大学とのコラボレーションや交換留学生制度、顧客への一部講座の開放なども考えていきたい」と井谷氏は長期的な展望にも触れた。

 2つ目の「人材活躍」については、若手やシニア、理系キャリア採用など様々な人材の活用に言及した。例えば、三井住友信託銀行では入社5年以内に複数の事業を経験させ、強みや課題を認識して早期からプロフェッショナルとしての歩みをサポート。2017年度から行っている社内事業説明会には毎回約400人前後が参加し、業務公募制度への応募につながっている。「新しい商品やビジネス創出の機会を生むビジネスコンテスト『未来フェス』には毎年200件前後の応募がある」とし、未来フェスから生まれた「おひとりさま信託」(2019年にリリースした単身者の終活を支援する商品)もヒットするなど、成果に結びついているという。

 このほか、理系分野と金融の融合を目指し、理系キャリア採用者で構成する「Technology-based Finance Team」も立ち上げている。研究者や専門家が金融の力を活用し、環境問題や社会解決に向けて新たな技術を実装したり産業構造の変革を後押ししたりすることを目指すチームだ。さらに2021年4月にはデジタル戦略を担う関連会社を設立し、CEO(最高経営責任者)を業務公募制度で募集して30代の社員を抜てき。社内外から多様なキャリア、個性を持つ人材を集めており、グループ内外に新しい風を生むことが期待されている。

 少子高齢化、人生百年時代の中でシニア層の活用という命題にも真正面から取り組んでいる。2021年4月からは定年を65歳に延長し、60歳以降はスキル・経験によって役割処遇が定まるジョブ型コンセプトを導入。「自律的で高スキルのシニア層を適切に処遇していくためにも、役割に応じた処遇体系を整備していく」と決意を語った。

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