2021年10月11日にオンラインで開催された「Human Capital 2021」(主催:日本経済新聞社、日経BP)において「持続的企業価値を創造する人的資本経営の実現に向けて」と題する討論会が行われた。経産省の島津裕紀氏、KDDIの白岩徹氏、ロート製薬の髙倉千春氏による講演とパネルディスカッションを開催。司会は日経BP総合研究所の大塚葉が務めた。

(写真:123RF)
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 討論会の冒頭、経済産業省経済産業政策局産業人材課長の島津裕紀氏によるキーノート講演が行われた。「持続的な企業価値向上に向けた人的資本経営の実装」と題し、日本企業の人的資本経営を支援する同省の取り組みを解説した。

 まず全体的な背景として、世界経済の現状を共有。コロナ禍の影響で世界全体の国内総生産(GDP)の成長率がリーマン・ショックよりも下落し、不確実指数は過去最高レベルに達している。その中で日本を含めた各国政府は社会課題解決を重視した大規模な経済対策を行っており、その下で「デジタル」「グリーン」「働き方」といった文脈での変化が加速している。

 世界では、コロナ前から人的資本への関心が高まっていた。加速度的に変化する環境下で「人」の重要性は増している。日本でも、経産省が昨年9月に「人材版伊藤レポート」を発表し、人的資本経営に向かう変革の方向性や、人材戦略に求められる視点や要素を打ち出した。今年6月には、コーポレートガバナンス・コードが改定され、人的資本に関する項目が新たに盛り込まれた。

 このコンセプトを実務レベルで具体化することを目指し、経産省では今年7月から「人的資本経営の実現に向けた検討会」をスタート。9月には、東京証券取引所の上場企業を対象に「人的資本経営に関する調査」を実施。コーポレートガバナンス・コードを踏まえた企業の対応状況や、人的資本経営の取り組みに関する実態を調べている。

 続いて、KDDIコーポレート統括本部人事本部長の白岩徹氏が「企業価値を創造する人的資本経営の実現に向けて」と題する講演を行った。KDDIでは、経営基盤を強化する取り組みとして、2020年夏から「KDDI版ジョブ型人事制度」「KDDI新働き方宣言」「社内DX」の三位一体の変革を進めている。

 「KDDI版ジョブ型人事制度」の導入に至った背景として、ITを活用しながらイノベーションや新たな付加価値を生み出せる人材の重要性が増している点がある。持続的な成長のためには新しい事業領域への拡大が不可欠であり、社の内外から必要な人材を確保するために人事制度の変革が急がれた。ISO30414を活用した人的資本の可視化を進め、事業戦略に応じて人事施策と連動する人材ポートフォリオの組み替えを可能にしていく。

 続いて、ロート製薬で取締役HR・WB経営推進本部E.Designerを務める髙倉千春氏が「人的資本に向き合うWell-being経営推進」と題する講演を行った。「ロート経営ビジョン2030」の主要テーマの一つは「つなげていく」ことだ。同社は世界の人々がウェルビーイングを実感できるように、医薬品、スキンケアを超える様々な事業でイノベーションを起こしてつなげ、そのために社内外の人材と組織をつなげていく。

 髙倉氏は、従業員一人ひとりのウェルビーイングに焦点を当てることが重要だと指摘する。ロート製薬は「個の主体性を基軸にしたWell-being経営」を掲げ、その具体的な施策として従業員の副業を支援する「社外チャレンジワーク制度」や「社内ダブルジョブ制度」、社内起業家を支援する「明日ニハ」プロジェクトなどを実施。価値創造の原点は「自律的な思考」にあり、副業や兼業はそれを培う貴重な機会になると述べた。