2020年に大企業を中心に導入が相次いだ「ジョブ型雇用」。テレワーク環境で成果重視の人事評価を実施したり、専門性の高い人材を採用したりできるメリットがあるが、社員が雇用の不安を感じたり、社内の人材育成機能が損なわれたりといったリスクもある。ジョブ型のメリットやリスクを「Human Capital Online」の記事で総ざらいしてみよう。

(写真:123RF)

 「社長からジョブ型雇用の導入を指示されたので大急ぎで対応している」
 「ジョブ型は考えていなかったが、親会社が導入を決めたので追随せざるを得ない」

 企業のCHO/CHROへの取材でこんな話を聞くことが多かった2020年。「ジョブ型」は経営のトップイシューとなった。背景にあるのは新型コロナ対策として一気に普及したテレワーク。在宅での仕事が増えると上司から部下の仕事ぶりが見えなくなる。プロセスでなく成果で評価するため、各社員の職務を「ジョブディスクリプション(職務定義書)」で定義し、達成度を明確に測ることを狙う。

 デジタルなどの分野での人材獲得競争も、ジョブ型導入に拍車をかける。職務給を導入することで、高度な専門知識/スキルを持つ人材を高給で処遇できるようにしようとするわけだ。

 ジョブ型導入へと経営側の意欲が高まる一方で、社員の不安も募る。ジョブ型と対比される「メンバーシップ型」が新卒一括採用や終身雇用といった日本型雇用システムと同義に捉えられがちなため、「ジョブ型になると解雇が増えるのでは?」といった懸念も生じる。日本の大学では企業の実務に直結した教育が行われていないため、新卒採用ではジョブ型を適用しにくい面もある。ジョブ型では個々人が自分で専門スキルを磨く「キャリア自律」が主体になっていくため、企業主導の研修やOJTが減り、結果として「ひとづくり」の力が衰える危険性もはらむ。

 こうしたジョブ型のメリットやリスクを「Human Capital Online」の記事で総ざらいしてみよう。ジョブ型の導入はもちろん、無茶ぶりをしてくる経営トップの説得や、現場との対話にもきっと役立つはずだ。

ジョブ型“的”な試み、失敗の歴史

 まずはジョブ型雇用の「歴史」を知ることから始めよう。テレワークの普及で急に脚光を浴びた感のあるジョブ型だが、2018年3月には経団連会長の中西宏明氏が既に言及している。人事制度研究の第一人者である日本総合研究所副理事長の山田久氏は、連載「山田久の『日本流ジョブ型雇用』ことはじめ』」で、その前から何度もジョブ型“的”な試みは繰り返されたとしている。

第1回 なぜ今ジョブ型雇用か 過去にもブームあったが定着せず
第2回 ジョブ型は成果主義の失敗を乗り越えるか

 20年前の「成果主義導入ブーム」もその一つだが、成果主義がうまくいかなかった理由として山田氏は「わが国ではスキルを身につける社会的な仕組みが整備されていないにもかかわらず、職能資格制度に内在していた未熟練労働者の育成の仕組みを軽視したため、全体のパフォーマンスが低下した」と指摘。学校教育と連携し、入社前から熟練労働者を育成する仕組みが整っている欧州などと比較したうえで、「日本でこうした仕組みをこれから構築するには時間がかかるため、出向や副業、再就職支援サービスなどでセーフティネットを確保することが必要」とする。

第3回 なぜ欧米ではうまくいく?ジョブ型雇用の実態と成立条件
第4回 革新力を求めてジョブ型導入、そこにある落とし穴
第5回 ジョブ型で解雇も増える?社会的なセーフティネットが必要