導入企業に学ぶ、「わが社流」のジョブ型アレンジ法

 ジョブ型を既に導入したり、これから導入したりする予定の企業は、こうした課題にどう対処しているのか。CHO/CHROへのインタビュー記事などを見てみよう。

 既にジョブ型で実績を持つAGCやカゴメは「若手はメンバーシップ型、ジョブ型は管理職層のみに適用」と2つの制度をハイブリッドで運用していることを明らかにしている。資生堂は20以上のジョブファミリー(領域)を作り、同じファミリー内に複数の職務がある場合も、職務等級が同じならば同じジョブディスクリプションを適用するといった「和洋折衷」を取り入れた。新生銀行では過去にジョブ型に近い制度を導入したが、組織のサイロ化などの課題が生じ、見直したことを明かしている。ジョブ型の導入当たっては、事業部門の責任者と密に連携しながら、事業に必要な人材を社内外から調達して配置したり、事業部門の人材に関する課題解決に当たったりする「HRBP(HRビジネスパートナー)」を設置することも検討に値するだろう。

独自ジョブ型に移行。和洋折衷で専門性とチームワーク両立~資生堂
「ジョブ型は役職者のみ」の方針は変えず
副業、専門人材採用、自由な働き方。新生銀行が打ち出す多様な人材活用の施策
65歳定年制へ。ジョブ型コンセプトを導入したシニア処遇を検討
会社に来るのは週何日? 社員が自律的に決める
ジョブ型は「万能薬」にあらず。カゴメ、参天製薬、日立の施策に学ぶ
ジョブ型雇用移行には「HRBP」が不可欠

ジョブディスクリプション作成を焦るな

 

 ジョブ型導入に人事担当者がどう対処するべきかについては、人事コンサルティング大手マーサージャパン(東京・港)の組織・人事変革コンサルティング部門プリンシパルである大路和亮氏のアドバイスが参考になりそうだ。「ジョブ型が何なのかよく分からないが、とりあえずジョブディスクリプションは作らなくては、という焦燥感に駆られる会社がすごく増えている。日本企業が変わる大きなチャンスなので、『ジョブ型=ジョブディスクリプションを作る』という話に終わらせず、経営戦略から逆算してなぜ必要かを個社ごとに言語化する必要がある」と話す。

 大路氏が勧めるのは、ジョブ型の導入が人の調達戦略の転換である点を踏まえたうえで、経営戦略を起点にその実現に必要な人を「質×量×単価」で定義すること。そしてジョブディスクリプション作成も含めて、人事部門ではなく現場を主役にすることだ。「メンバーシップ型においては、内部公平性の観点から、人事部門が間に入って全社調整を行う必要がある。これに対してジョブ型では、あらかじめ必要な人材の質×量×単価を決めておけば、ビジネスサイドが主体になって社外からでも社内からでも同じプロセスで人を調達できる」と話す。

戦略的ジョブ型導入のススメ(前編)「とにかくジョブディスクリプション」に“待った”
戦略的ジョブ型導入のススメ(後編)人事への丸投げは禁物、事業部門も汗をかけ

 バズワード化している感のあるジョブ型だが、どこの組織にとっても最適な解であるわけではない。人事制度の基本に立ち返ってジョブ型の本質を理解しつつ、メリットとリスクを天秤にかけながら導入の可否を考えていきたい。