ポートフォリオを組むメリット(1)コストが下がる

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 まず、コストが下がるというメリットがあります。これは特に、固定的な賃料が大きく発生する左上の「オフィスビル」から、企業にとっては費用が発生しない「社員の自宅」へ働く場を移行することで得られるメリットです。一方で、社員が在宅勤務時の光熱費や通信費を負担することになったり、また、社員の自宅は顧客への訪問など業務上の移動に対し、必ずしも利便性の高い場所にあるわけではありません。さらに家事や育児との兼ね合いなどで、仕事に最適な環境だともいえないでしょう。これを補っていくために、マトリクスの右側の働く場が必要となります。

ポートフォリオを組むメリット(2)移動効率が上がる

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 社員の仕事に適した環境を提供し業務上の移動効率を上げるには、図の左上にある「オフィスビル」から右上の「コワーク」に働く場を移行することが有用です。これを2つのパターンに分けて説明します。

 まず1つ目のパターンは業務時間内の移動、つまり外回り時の移動効率です。次の図左で示したように毎回オフィスに戻ってくる場合と、右のように法人契約しているコワーキングスペースを経由しながら移動する場合を比較すると、東京都心での平均的な外回り業務において1日あたりの可処分時間が2~3時間は増えるというシミュレーションがあります。

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出所:筆者作成。自宅最寄を川越駅、勤務先最寄を渋谷駅と想定。1日の訪問先の最寄を東京駅、六本木駅、赤坂見附駅、虎ノ門駅を前提とし、訪問の都度渋谷に帰社する場合と、訪問の合間に近隣のコワーキングスペースを経由し帰社しない場合で生まれる1日あたりの可処分時間差より算出。

 2つ目のパターンは出退勤時の移動時間です。次の図左で示したように東京郊外から大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアに出社する場合と、右のように出社しなくてもいい日はターミナル駅の近くに法人契約したコワーキングスペースに出勤して働いて帰る場合を比較すると、これも平均的には1時間程度の可処分時間が増えるという結果があります。

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出所:筆者作成。自宅最寄を川越/千葉/横浜/八王子駅のいずれか、勤務先最寄を大手町/東京/有楽町駅のいずれかを前提とし、自宅から勤務先に出勤する場合と、自宅から大宮/船橋/川崎/立川のいずれかのコワーキングスペースに出勤し、勤務先には出勤しない場合で生まれる1日あたりの可処分時間差より算出。

 ここで、せっかくオフィスを縮小したのにコワーキングスペースを借りると、結局費用が発生してしまうのでは?という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。これについても試算結果があります。ある程度以上のグレードのオフィスビルに入居しているのであれば、極端に高い個室プランなどでコワーキングスペースを契約するのではない限り、種々のランニングコストも含めたトータルの一人当たりコストではコワーキングスペースの方が費用は安くなる、という傾向があります。(注)

 ちなみに「ポートフォリオを組むメリット(2)移動効率が上がる」の図で「カフェ」から「コワーク」に向けて「補完」という矢印を記しました。この意図は、コワーキングスペースも契約 / 利用が増えすぎるとやはりコストがかさむため、取引の多い特定の得意先訪問のような業務時間内移動はコワーキングスペースできちんと受け止める一方、単発に発生する移動はカフェ含めたパブリックスペースで補完するような役割分担を考えていくことも必要、という主旨です。

 オフィスビルを縮小した分を、在宅勤務だけに頼らずに、社員の業務内移動時間や居住地に合わせてうまく場所を選んだコワーキングスペース(+カフェなどのパブリックスペース)を活用することで、コストは最小限に抑えつつ、仕事に適した環境を保ちながら移動効率を上げて可処分時間を増やすことが可能となります。

(注)オフィスビル賃料の月額坪単価を3.5万円~2.5万円幅で想定し、内装・什器の減価償却費、水道光熱費や清掃費等も含めた1人あたりの月額運用コストと、東京都心部のコワーキングスペースの月額入居費(個室プラン、固定席プラン、自由席プラン)の相場を比較。