ポートフォリオを組むメリット(3)流動性が上がる

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 メリットの3つ目は、働く場の流動性を上げる、つまり必要に応じて働く場のバランスを調整でき、無駄なコストを抑えられるということです。

 例えば、今は社員数が700名だが3年後には1000人に増やすという人員計画があるとします。社員の働く場を全て左上の「オフィスビル」で賄うとすると、今の時点から1000人分のオフィスビルを借りることとなり、社員数が1000人に達するまではある意味無駄なコストを払い続けることとなります。一方、マトリクス右側の働く場も組み合わせて賄うとすると、理屈としては700人分のオフィスビルを借りつつ、ある程度までの増員分はコワーキングスペースを借り足して賄えばよいと考えることもでき、無駄なコストの発生を最小限に抑えることができます。

 また、今回のパンデミックのように突然外出が制限され、社員の大部分が在宅勤務となってオフィスビルの稼働率が著しく下がる場合、左上の「オフィスビル」だけで賄っている状況では「空箱に家賃を払う」という無駄なコストが発生します。この時、右側の働く場も組み合わせて運用していれば、ひとまず右側の働く場をいったんリリースしコスト削減するいうことが柔軟に行えます。

 このように社員数の変動や働く条件の変化に合わせて柔軟にオフィス戦略を変更し、コストを常に最適化できるのが、この「流動性が上がる」というメリットです。

ポートフォリオのモデルケースとは

 コスト削減というメリットを主な目的に、モデルケースでポートフォリオ効果を試算した例をご紹介します。社員数1,000名の会社で、これまで説明してきたポートフォリオを適用できる社員、すなわち外出の多い営業部門の社員、在宅勤務対象者、顧客先常駐対象者にそれぞれオフィスビル在席率を割り当て、オフィスはどのくらい縮小 / 外部に分散できるか、その際の全体のランニングコストはどのくらい変化するか、ということを試算しています。

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出所:筆者作成。このケースでは「常駐先の顧客オフィス」という働く場もポートフォリオの1構成要素となるが、説明簡略化のため図から割愛。

 この試算では、オフィスビルは768人分に縮小でき、全体のランニングコストは8%下がる、という結果になっています。8%という数字をどう取るかは色々な見方があるかもしれませんが、コスト下げつつも社員の移動効率は上がり、いざというときのオフィス流動性も上がっていると考えると、少なくないインパクトが生まれていると言えるのではないでしょうか。

 また、このモデルケースの与件として在宅勤務対象者が50名、つまり全社員の5%という想定ですが、大々的にリモートワークを取り入れていくようなケースであれば、さらに大きなコスト削減を実現しうることになります。