従業員一人ひとりの心の「平熱」を知る

林: Geppoには最近、自分の過去の回答履歴を振り返るための機能を付け加えました。過去の回答履歴を見ると、自分のコンディションがどう推移しているかを知ることができます。

河野: 個人がそれぞれ自分のコンディションの推移を把握することは大事ですね。また企業も、集計されたデータを見て全社員の傾向を見るだけではなく、社員一人ひとりのデータを見ることが大切なのではないかと改めて思いました。例えばやる気に燃えた新入社員が入ってコンディションの数値を上振れさせると、全体が良くなっているように見え、コンディションが悪化している人を見逃してしまいますよね。

 従業員満足度調査など、社員に対する調査の多くはこれまでは「会社は個人の回答内容を見ない」という前提で実施されていました。回答にバイアスをかけないためです。そのため統計データしか見られません。でも今のように、働き方が大きく変わって働く人のメンタルにも大きな影響を与えるという局面においては、前提となる手続きを経たうえで、一部の担当者は個別データを見られるようにした方が良いという議論があります。やはり個人の変化にこそ注目したい、と。これについてはどうお考えでしょうか。

松田: ツール提供会社の考え方次第ですが、Geppoは個人に注目しているため、回答結果を実名で見られるようにしています。

 従業員個々人の「平熱」を知るのが必要だと考えています。レベルの4が平熱の人もいれば、2が平熱の人もいるので、その人の平熱との差分や変化を見るのが大切なのです。例えばカラ元気の傾向がある人はずっと4を付けます。カラ元気で無理を続けるのがボディブローのように利いてきて、そのうち3くらいに下がっただけで急にがっくりきてしまうこともあります。

ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役の松田 今日平氏(写真:稲垣 純也)
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ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役の松田 今日平氏(写真:稲垣 純也)

林: Geppoの提供に当たっては「直属上司には見せない」「評価に使わない」ことを前提にしています。会社に忖度して正直に書かない人もいますが、それ自体はそれほど大きな問題ではないと考えています。低い点数を付けることで人事が手を差し伸べてくれると思えればそれでいいのです。「会社に気にしてもらっている」と思えることも心の健康を支える一つの大きな要素なのです。

 Geppoをご利用いただいている多くの会社では、回答結果が悪かった人を中心に人事が適宜面談しております。弊社にはデータサイエンティストがおり、Geppoの3つの質問の回答と、別の組織サーベイの回答内容を合わせて分析しています。この分析を通して、例えば仕事満⾜度のスコアが悪化したことをきっかけに⾯談する際、そもそもスコアが悪化した原因が何か当たりを付けることができ、⾯談の品質が上がることが期待されます。

河野: データを取っていない組織はまずはデータを取得することから始めなくてはいけませんが、データを取ることが目的ではありませんよね。分析を行い、その結果に基づいて具体的なアクションを取ることがポイントだと思います。