ベンチャーから大手への転職も可能に

河野:最後に、本記事の読者には、スタートアップ転職が頭の片隅にある人も多いと思うのですが、読んでみて少しでも興味をもたれた方への、プロからのメッセージをいただけないでしょうか。

高野:こういう仕事を22年もやって、ベンチャー投資も2009年から4回ぐらいやって、上場もしました。その経験からすると全ての人がベンチャー、スタートアップに向いているとは正直、思わないです。どちらかというと、お話した結果「今の会社で頑張った方がいいんじゃないですか」となる方が多い。特に大手企業の人についてはそうです。ベンチャー企業の経営者のなかには、「全ての人がスタートアップに入るべき」といった主張をされる方もいますが、僕は全く異なる意見です。やはり向いていない人の方が多いので、不幸せになっちゃいます。ただ、挑戦したい、会社のブランドを捨てて、自分のブランドで勝負してみたいっていう人にはぜひチャレンジしてもらいたいとも思っています。人生一度きりだし。

 大手出身の人がベンチャーに来ても、今はオープンイノベーションなどで大手と組むケースも多いので、大手でまあまあだった人はベンチャーに来た後に結局大手に戻れるんですよね。10年くらい前から「ベンチャーから大手に転職できる」時代になっている。大手企業もベンチャー人材がほしいんですよ。

 でも、ほしいのは1社目大手の経験がある人。やっぱり大手ならではの常識ってあるんですよ。だから僕はチャレンジするリスクは昔よりはだいぶ低減されていると思っています。 自分はそういうキープレーヤーの人を発掘、応援するのがミッションなので、企業の優秀な方を発掘したいと思っています。起業もいいし転職もいいんじゃないかと。もちろん、大手ですら評価が低かった人はダメですよ。

河野:非常に示唆に富んでいますね。私はもう大手に戻ることは多分ないと思うけど。

高野:うまくいった方はもう戻らないと思うんですよね。でもこの辺はうまく言語化が難しくって、例えばアイデミーが大型上場とかするじゃないですか。そしたら「俺は河野は先見性があるやつだと思ってたよ」とか言い出す人が必ず現れる。定番のやつです。「あいつはできると思ってたんだよ」と取ってつけたように言う方がたくさん登場なさる。謎な現象ですが。まさに手のひら返し。それで戻ってこい、と。

 私も、若い頃いろんな粗相があったので「あいつに絶対投資しちゃダメだよ」と言っている人はたくさんいたんですけど、上場したら“先見性のある男ブランディング”になったんで。いや世の中すごすぎるな。

河野:面白いですね。

高野:転職はやはりビッグイベントです。家族とかお友達とか先輩後輩とかいろんな人から、反対されることもまだまだ多いと思うんです。でもそこで止まっちゃうということは、やっぱりそこまでの思いですよね。あとちょっと違う路線でいうと、オープンイノベーションとか新産業を作るみたいな話を多分全ての会社がしていると思うので、今大手企業にいらっしゃる方がベンチャー企業を支援したり、発注していただいたりすることで、初めてスタートアップが成功できるという側面もあるのです。今の会社の中から応援する方法はないのかという可能性をぜひ考えていただきたいと思います。

 大手対ベンチャーという構図で、ツイートすると結構バズるようですが、私は全然そんな対立構造ではないと思っています。ベンチャーの顧客の多くは大手なんだし、ベンチャーキャピタルのお金なんかもだいたい大手企業が出しているわけですから。仲間なのです。オールジャパンみたいなものだと思います。そういう方が自分の好みに合っていますね。

河野:本日は、たいへん貴重なアドバイスありがとうございました。  


 最後に高野さんもコメントされていましたが、大企業とスタートアップは対立概念ではなく、エコシステムなんですね。今回お話しして、モノやカネと同様の経営資源でもある「ヒト」の還流も普通にあって良いのだ、という考えに至りました。

 読者の皆様、“スタートアップというキャリア”は、選択肢としては、全ての人に当てはまるものではないですが、柔軟性の幅を広げたり発想を転換したりすればハードルは下げられると思います。文字どおり還流することも可能ですので。

 スタートアップ側でお待ちしております!