新型コロナによって世界は一変、日本企業の長年の課題である“働き方”も変わらざるを得ない。100年前、パンデミック後に政治や経済、文化が大きく発展した「黄金の20年代」が訪れたように、2020年代を働き方の黄金期にするにはどうするか。第1回は商談の変革がテーマだ。
(写真:123RF)

 今を遡ること100年前。

 1920年代の10年間を称して、Golden Twenties(黄金の20年代)とかRoaring Twenties(狂騒の20年代)という言い方をするようです。1910年代の第一次世界大戦やスペイン風邪のパンデミックを経て、平和と安寧を取り戻した欧米で言われた言葉とのこと。この時代、政治や経済だけではなく、文化や芸術、科学の分野でも大きな発展を遂げました。1929年の世界恐慌までの輝かしい平和な10年間ということで、ある程度前向きに捉えられる言葉だと、私は理解しています。

 くしくもその100年後の2020年、新型コロナウィルスによって世界は一変しました。日本においては、幕末や昭和の終戦と同じ程度のインパクトと捉える向きもあります。

 日本社会で、長年の大きな課題であった“働き方”も変わらざるを得ません。ウィズ/アフターコロナ時代とか、ニューノーマルといったキーワードのもと、新しい働き方を模索する動きも加速しています。偶然ですが100年前のアメリカで大統領となったハーディングの選挙キャンペーンのスローガンも「ノーマルシー(Normalcy、常態に復すること)」だったそうです。

 本稿では21世紀にも「輝かしい20年代」が訪れることを願って、これからの働き方をビジネスでの具体的なシーンごとに分けて考えてみたいと思います。

 最初に簡単な自己紹介をさせてください。

 私は現在アイデミー(東京・千代田)という、AI人材育成やAIの内製化支援を行うスタートアップの取締役COO(最高執行責任者)や、グロービス経営大学院の客員准教授などを務める傍ら、働き方に関する書籍をこの8年間で7冊ほど出版してきました。会社経営を通じて社員や自分の働き方を考えたり、教育や研修、発信活動によって世の中に向けて働き方の改善を呼びかけたりしています。

 非常にシンプルな言い方をすれば、この国のビジネスパーソンの働き方をより良いものにしたいという思いのもと「理論と実践」両面で関与しています。この連載ではその一部を取り上げていきます。

 初回は「顧客商談」です。

嫌われた「リモート商談」が唯一の選択肢に

 コロナ禍の深刻化を受けて、日本中のビジネスパーソンは基本的には出社しなくなり、会議はリモートで実施されることになりました。その前から安価なリモート会議ツールが存在していたものの、活用している企業や個人は多くありませんでした。

 私は会議・商談ともにリモート推奨派で、コロナ禍前も日常的にリモート商談を打診していました。社員数の少ないスタートアップが日本全国をカバーしようとすれば、リモートでの商談を進めるのが効率的、というより「そうせざるを得ない」からでした。

 しかし、当時の世の中にそれを受け入れる土壌は十分に備わっていませんでした。

 例えばこんなことがありました。誰もが知る先進IT企業の方が、弊社製品に興味を持ち「概要を知らないので、説明に来てくれ」と連絡をくれました。「まずはご要望を知りたいのでビデオチャットでいかがでしょう?」と打診したところ、「ビデオチャット?それならもう要らない」と言われました。ほんの半年ちょっと前のことです。

 それが緊急事態宣言後、数週間にして「リモートしか選択肢が無い」という状況に一変し、リモート商談に一日の長がある私達はすんなり順応できました。その経験も踏まえて、いくつかリモート商談の利点や、チャレンジに対する対応策をまとめてみました。