コロナ禍でリモート勤務が常態となるなか、ビジネスパーソンのファッションも大きく変わっている。オンライン会議で好印象を与えるには何を着るべきか。人気セレクトショップのセールスマスターが指南する(写真:稲垣純也)。

 2020年代を働き方黄金期にしようというこの連載ですが、コロナ禍を経て実は大きく変化したことの一つに、仕事中の「服装」があります。

 思い出してみれば、コロナ禍以前も「スマートカジュアル」や「クールビズ」という言葉が生まれ、カジュアル化の流れはありました。ですが、やはり多くの場合、重要なプレゼンや顧客訪問は性別問わずスーツを着用することが暗黙の前提でした。男性であればネクタイ、女性であればヒールのある靴が、長らく“正しい”服装だったのです。

 しかし、ご案内の通りリモートワークの場合は、立ち姿を綺麗に見せるためのスーツはあまり意味がなくなりました。家の中でネクタイをするとか靴を履くというのも現実的ではありません。画面に映る部分だけが“よそ行き”エリアになりました。それが逆に注目されることにもなります。

 また、私生活のモードのまま仕事に流れ、仕事のテンションのまま私生活に流れていくと、メリハリがなくなり、ワーク、ライフ双方への悪い影響が出る可能性もあります。服装でそれを切り替える工夫をしている人もいるのではないでしょうか。

 今回はセレクトショップ大手、ユナイテッドアローズの店頭で接客に従事され、服装のプロフェッショナルであるお二人に、働く人の装いの変化やビジネス目的をより快適に達成するための服装面での工夫についてお話を伺いたいと思います。

 営業統括本部 プライベートサービスデスク 室長の藤田裕貴さんには、私自身が6~7年お世話になっています。この2年で、勧めていただく商品は明らかに変わってきました。「今シーズン、スーツはどうしましょう?」という会話はなくなり、実際、スーツを着る回数は激減しています。

 もうお一方は、ユナイテッドアローズ丸の内店でセールスマスター(販売に特化して優れたパフォーマンスを発揮する販売のスペシャリストに対して授与する称号)として女性服をご担当の中嶋昌子さんです。以前ある女性社長とオンラインの打ち合わせをしたとき、画面越しにオレンジのスカーフを巻いた姿を見て、斬新な印象を受けました。ちょっとしたアピールの仕方や、立場に応じたファッションの常識も、リモート環境下では変わってきているのかもしれません。ということもあり、中嶋さんから女性の読者向けにも有用なメッセージをいただければと思います。

「ふらっと来店」は激減、ネットで下見して慎重に買い物

河野英太郎氏(以下、河野):私の素人考えですが、コロナ禍は衣料品業界に大きな影響を与えたと思います。お店は今までのように、何かのついでにふらっと入る対象ではなくなりました。売り上げにもそれなりにインパクトがあったという報道も見聞きします。お二人が現場で接客する中でお客様の求めるものや、買い方には、どんな変化があったのでしょうか。主にビジネスパーソンについて伺えればと思います。

中嶋 昌子(なかじま・まさこ)氏 ユナイテッドアローズ丸の内店
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中嶋 昌子(なかじま・まさこ)氏 ユナイテッドアローズ丸の内店
2008年入社。ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングの店舗勤務後、ユナイテッドアローズ 銀座店、六本木ヒルズ店を経て、2021年より丸の内店に所属。2021年セールスマスター認定。

中嶋昌子氏(以下、中嶋):今は東京の丸の内の店舗に勤務していますが、ここはかつて“丸の内OL”という言葉があったように、大手の企業に勤めていらっしゃる女性が多い地域です。大手企業は比較的リモートワークが多く、毎日通勤していたときは、店舗に頻繁にふらっと立ち寄って下さっていたお客様も、コロナ禍以降は週1の出勤をリアルな買い物の貴重な機会と位置付けていらっしゃるようです。ネットで下見をしたうえで、「これありますか」と、ピンポイントで聞かれることが増えました。少ない出勤の機会を有効に活用しようという意図を感じます。まとめ買いをされるお客様の比率も一気に上がりました。

 会食の機会が激減したからだと思いますが、食事のために着ていくような華やかなワンピースやスーツなどの売り上げは減っています。一方、ブラウスなどのトップスはよく売れており、オンライン会議で顔映りのいい鮮やかな色のものや、ボウタイや襟などワンポイントがあって印象付けられるものを好んで購入されるケースが増えました。明らかに、お客様がおっしゃることが変わってきていると感じます。

河野:藤田さんはいかがでしょうか。

藤田裕貴氏(以下、藤田):私は現在、お客様アポイントの対応を主に六本木ヒルズ店で行っています。コロナ禍で、お客様の用途が多様化してきているように感じます。たとえば、六本木ヒルズに多い外資系企業勤務のお客様は特に出社回数が減っています。経営層は比較的出社が多いのですが、一般社員の方の出社頻度は低いようです。

 こういう背景もあり、スーツをお召しになる機会が減ったお客様が多くいらっしゃいます。なかなかお会いできないお客様に、あまり必要としないスーツを提案するのではなく、別の商材で提案機会を見つけ、お客様との接点を持つことを考えています。リモートワークなど新しい環境に適応する提案をいかに生み出すかが会話の幅につながると思っています。

 私自身は以前から少し派手目の提案をする傾向はあったのですが、こんな時期だからこそ派手さをあえてお客様のパーソナルカラーとして打ち出してみたりしています。大変な時期ですが、パーソナル化が進展するチャンスだと思っています。今までも提案型でずっとやってきたのですが、これまでの提案活動を通じて培った適応力が、今こそビジネスにつながってきていると感じています。

藤田 裕貴(ふじた・ひろき)氏 ユナイテッドアローズ 営業統括本部 プライベートサービスデスク 室長
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藤田 裕貴(ふじた・ひろき)氏 ユナイテッドアローズ 営業統括本部 プライベートサービスデスク 室長
1997年アルバイトとして入社。複数店舗の勤務を経て2017年以降はユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店に所属。2011年セールスマスターに認定、2021年セールスマスタープラチナに昇格。