コロナ禍のリモート環境で若手をどう育てるかは難しい課題だ。キャリア意識を持って主体的に動き、オンラインのコンテンツなどで自ら学ぶ人が増える一方で、仕事の悩みを誰にも相談できずに自宅で孤立する若手も少なくない。

(写真:123RF)

 今回は「2020年代の人材育成」について考えてみます。

 コロナ禍以前から、私は「キャリアは自分で築くもの」と言う考え方を持っていました。「当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、日本社会においては意外にそうではありません。 会社からの辞令に一喜一憂したり(または唯々諾々と受け入れたり)、所属組織に不満を持ちながらもそれを変える努力をせず、ただその場にとどまったりする例はいくらでもあります。これらは「キャリアを会社に委ねている」典型的な例です。

 個々人のキャリア目標を実現するための、大切な要素の一つにスキル開発があります。キャリアが自分で築くものであるなら、当然スキル開発も各自の責任です。「会社が機会をくれないからスキルが伸びない」とか、「部下の成長を考えない上司だから自分は不幸だ」などと言って自ら動かないうちは、本来自分に帰する責任を会社に転嫁していることになります。

 そんな考え方を持っている私ですが、チームリーダーや上司、経営者がチームメンバーや部下のキャリア開発やスキル開発について無関心であっていいとは考えていません。むしろ、メンバーの成長を支援することこそが、リーダーや上司、経営者の仕事の大半であると思っています。

 「キャリアは自分で築くもの」と「リーダーの仕事はメンバー育成」との間には矛盾はありません。リーダーの仕事とは、キャリアを自分で築こうとしているメンバーの支援をすることなのです。依存体質が抜けない人に対しては「キャリアは自分で築くもの」だ気づくように導いてあげることが必要ではないでしょうか。

 前置きが長くなりましたが、今回はコロナ禍以前と以後で人材育成がどう変わったのかを考えてみます。

「伸びたい人」は無限大のインプットを得られる

 まずはコロナ禍が人材育成のプラスになった点。総じて自立した個人や、成熟した文化を持った組織(古い組織という意味ではありません)では、多くが追い風になっていると考えられます。

 まずリモート環境では、他者からの干渉が減る分、どんどん仕事がはかどります。自分のキャリア志向やスキル開発の方向性にあったテーマに関する書籍やウェブサイトを気兼ねなく探索したり、コロナ禍以降急増したオンラインのセミナーや勉強会にも気軽に参加したりできます。

 私が客員准教授を務めているグロービス経営大学院ではコロナ禍前からフルリモートでのMBA取得が可能でした。今では、オンキャンパスとオンラインの完全統合まで実現しています。自らキャリアやスキルを開発しようと考える人にとっては、どんどん可能性が広がる環境になっています。こういった自立した個人をメンバーにもつリーダーは、機会だけを与えて、それ以外は当人に任せるという姿勢でいいでしょう。

 事実、私の周りには「リモート万歳」とばかりに、コロナ禍以前に増して高付加価値な仕事を量産している人がたくさんいます。こういう人たちは元々、リモートワークの意義をネットで発信したりしていましたが、コロナ禍以前は「リモートワークができる環境に恵まれた、ちょっと先進的な」人たちだと周囲からはやや特別視されていました。リモートワークが急激に普及した今は、ムダのない働き方や合理的な考え方がより多くの人に理解され、「あんなふうになりたい」と評価されるようになっています。これらの人たちにとっては、もうすでに「働き方黄金期」は到来しているのかもしれませんね。

 私が経営陣として関与するアイデミーでも、フルリモートワークを4月時点から実行し、すぐに適応できたことを当時は誇らしく思っていたし、従業員も含め内外にもポジティブな面としてフルリモート化に即時対応できたことを積極的に発信をしました。時代の変化を確信していたのです。 これが、キャリアやスキル開発の、コロナ禍によるフルリモート化の「プラスの側面」です。