「成長面談」で未来を創る

 成長ナビは、こうした状況の改善にも役立ちます。冒頭で紹介したご意見を例にとって考えてみましょう。部下の行動がその日から変わった理由は何でしょう? それは、成長ナビのプロセスを通じて上司が変わったからなのです。目標を達成するまでの道標をつくるプロセスは次のようなものです。

  1. 目標を一緒に考える
  2. 目標達成を妨げる障害を一緒に考える
  3. その障害を活用して中間目標を一緒に考える
  4. その中間目標を達成するために何をすればいいかを一緒に考える
  5. 達成する手順を一緒に考える

 上司と部下で一緒に考える、この5つのシンプルなステップは「やれるように教える」ことにほかならないのです。成長ナビを組織的に導入することは、部下を育てる上司を育成することにつながるのです。

 現状の人事評価が過去の行動を評価対象としているのに対して、人の成長を促す「成長ナビ」は、未来を変える人材育成方法だと位置付けられます。多くの方が感じてらっしゃると思いますが、過去の行動を議論する評価面談はどうしても暗くなりがちです。一方、未来を創る成長面談は参加者全員がワクワクします。過去は変えられませんが、未来は変えられます。どちらの方に時間を使ったらよいかは自明じゃないでしょうか。

2週間ごとに評価の機会を設ける

 変えられる未来に集中し、人の成長に重点を置くと、人はグングン育ちます。場合によっては、数日や数週間の単位で成長し、目覚ましい成果を出すようになります。すると年に一度の評価では、人の成長のペースに追い付かなくなります。ちなみに「成長ナビ」を運用している弊社では2週間に一度のペースで評価を見直して、成長にふさわしい仕事と処遇を随時提供しています。

 年に1度の評価だと、次の評価まで1年あることになります。人材の流動化が進んだ昨今、優秀な人ほど評価に不満がある場合、流出する可能性が高くなり、これは人的資本経営上の大きなリスクになっているのは人事関係の方々ならば既に実感しているのではないでしょうか。つまり、硬直した人事制度が経営上の大きなリスクになりかねないのです。

 評価の頻度を上げるというのは大変なように思われるかもしれませんが、実は運用はずっと楽です。年に一度まとめて評価を行っている場合、評価の作業に大きな負荷が集中します。でも評価の頻度を上げると、負荷も平準化していきます。

 モノづくりの世界で世界的に知られている「トヨタ生産方式」では、大ロットによる生産を戒め、小ロットによる平準化を促しています。同様に評価も年に一度という大ロット評価から、頻度を上げて負荷を平準化し小ロット評価にすることで現場の負担も下がるのです。そもそも、部下を育成することは上司の重要な役割の一つです。日常業務として日々運用することは当たり前のことともいえます。

 「成長ナビ」では自分で立てた目標に向かって、どれだけ成長したかを議論します。つまり他人との比較という概念がなくなります。だから不公平という概念がなくなり、現場のギスギスも解消します。たとえ評価に不満があっても、1年間待たなくても、2週間後にまた評価の機会が来るのですから、すぐに巻き返しも可能。優秀な人材が流出するのを防ぐことも可能になります。

 中途採用が当たり前となっている昨今では、人事は日常から中途採用候補者を評価し、その人にふさわしい処遇を査定しているはずです。つまり、既に年に一度の評価という硬直した制度は実質的には解消しているのです。外部人材獲得のために適用しているのですから、内部の人材評価にも適用は可能でしょう。

 「成長ナビ」の5つのステップはとてもシンプル。制度を大きく変えなくても、運用は可能なのはお気づきかと思います。これを人事部が組織的に導入すれば、おのずと人を育てる上司を育成するともに、人を育てる企業文化を醸成することにつながります。

 人の成長なしには、組織の成長なし。人の成長の停滞は、組織の停滞そのもの――。

 冒頭の事例のように、まずは身近なところで試してみませんか? 連載の最終回となる次回は、企業経営者の最大の悩みといえる「後継者育成」の問題に対してシンプルな解決方法を紹介します。