世界で1000万人が読んだビジネス書の金字塔『ザ・ゴール』。この書籍は既成概念を打ち破り、目覚ましい成果を出す「ブレークスルー人財」を育てる教科書でもある。著書エリヤフ・ゴールドラット博士の愛弟子で、全体最適のマネジメント理論「TOC(制約理論)」の世界的なトップエキスパートの岸良裕司氏が、ブレークスルー人財の育成法を分かりやすく、実践的に解説する。最終回となる今回は、多くの経営者が悩んでいる「後継者育成」の問題を議論します。
(写真:123RF)
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 これまで高い目標に向かってチャレンジし続ける「人財」の在り方、そして部下を育てる上司をいかに育成するかを議論してきましたが、今回は「後継者育成」について議論しましょう。後継者育成は経営トップの最も重要な仕事の一つです。会社の命運を決める大きな要因なので、人事部門にとっても極めて重要な課題です。

後継者に何を望むか?

 もちろん、自分の退任後は「会社がどうなってもいい」と思っている経営者はいないでしょう。ほとんどの経営者は「自分の後任には現在よりも良い会社にしてほしい」と願っているはずです。より良い会社を願っているならば、より良い経営者が必要なのは当然のこと。そのため、一般的には以下のように様々な取り組みを行っています。

  • 幹部候補を選抜して研修を実施する
  • ビジネススクールに派遣して幅広い知見と人脈を持ってもらう
  • ジョブローテーションや子会社への派遣で経験を積んでもらう
  • あえて経営危機の子会社に派遣して修羅場を体験してもらう
  • 経営者の間近のポストに就いてもらってOJTで鍛える

 大半の企業が次世代の経営者を育成するための施策に対して真剣に向きあっているはずです。それにもかかわらず、後継者をうまく育成できないケースが多いのが現実です。外部から「プロ経営者」を招くケースもありますが、後継者育成の課題は残ります。なぜならば、プロ経営者の多くも次の経営者は社内から登用したいと願っているからです。

 経営者としての適性を見極めようと複数の候補者に競わせる企業もありますが、これには大きな弊害があります。派閥争いを生み出す可能性が高いですし、場合によっては優秀な人財が会社を去ることになりかねません。こうしたケースで著名なのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の伝説的経営者、ジャック・ウェルチ氏の後継者選びです。

 ウェルチ氏は3人の候補者を指名して徹底的に競わせました。最終的には、ジェフリー・イメルト氏が選ばれるのですが、敗れた2人は会社を去って別の会社のトップに就いています。優秀な人財が辞めてしまうのはもったいない。ましてや、長い時間をかけて育ててきた優秀な経営者候補がいなくなるのは、会社にとって極めて大きなダメージだといえるでしょう。