高い目標が「ブレークスルー人財」を育む

 こうした目標設定は若手向けのものだと思われるかもしれませんが、ベテランにも有効です。というのも、仕事に対する知見が豊富な人ほど、若手からは出てこない大きなUDEを感じているからです。この好例が現在、ゴールドラット ジャパンでパートナーに就いている飛田甲次郎です。

 飛田はオムロンの常務として、ものづくり革新本部長を務めていました。利益の向上のために原価削減に取り組んでいましたが、全体では利益が増えていないという状況に陥りました。一般的な企業の管理会計で使われている原価計算に基づいた改善では全社の利益は向上しないのです。これが、当時の彼のUDEです。

 そんな飛田が定年の2年前に、TOCの知識体系に含まれる「スループット会計」に出会い、UDEを解消できることを知ります。しかし、オムロンで改革に取り組める時間はあまり残っていません。定年後、「オムロン常務」という肩書に目を付けた国内外の企業や大学からの誘いがありましたが、丁重に断り、ゴールドラット ジャパンに再就職しました。現在の彼の目標は、世界中の企業から会計制度における誤った既成概念をなくすことです。こうした飛田の信念は『日経ビジネス』(2016年9月19日号の特集「サラリーマン終活『定年後30年時代』の備え方」)でも取り上げられています。

 人生の大先輩が高い目標を設定し、成長し続けている姿はゴールドラット ジャパンの若手だけでなく、もちろん私にも大きな刺激になります。あの年齢になっても貪欲に成長し続ける姿を見ると、将来はあのようになりたいと希望の光にさえ思えてくるのです。

 高い目標を設定することは「ブレークスルー人財」を育成する第一歩です。高い目標があれば、自分の成長を実感して仕事のやりがいや張り合いが生まれてきます。私たちの経験では、それだけでも見違えるように人の行動は変わってきます。日々の仕事の中で自律的に問題を定義して、その解決に動くようになるからです。これこそが前回の記事でも言及した、ピーター・ドラッカー氏が提唱する「MBO-S(Management by Objectives and Self-Control)」にほかなりません。

 高い目標が「内発的動機付け」につながり、「ブレークスルー人財」の育成につながる――。これにご賛同いただける方は、まずは先ほどの図を基にご自身のUDEとDE、そして10年後の未来を描いてみませんか。次回は、目標を達成するための中間目標を設定するプロセスの詳細を説明します。