アルコールの害も知り、うまく付き合うコツ

 手軽な気晴らしであるはずの家飲みで気を付けていただきたいのは、アルコールが原因で健康を害し、仕事を失い、家庭やプライベートまで壊してしまう、いわゆる「酒に飲まれる」状態にならないことだ。アルコールには知性や感情を司る脳に依存を引き起こす面があることを認識しておかなければならない。

 タバコは同じくニコチンに対する依存を起こすが、肺がんをはじめ、様々な健康影響が一般にもよく知られるようになり、宣伝広告まで厳しく制限されている。一方で医師の立場から見ると、アルコールは社会的な面も含めて、より大きな健康影響を与えているものの、テレビ、ネットでの広告は盛んで、一般にはそうした認識は乏しい。

 重大な健康影響である「アルコール依存」は個人の体質にもよるが、下の図のように進行し、ご本人と周囲の人にダメージを与えていく。

 本稿の読者でお酒を嗜む方々は、次の5つの段階のどこにあたるだろうか?

1.飲み会等の機会のある時だけ飲む
2.月ないし週に何日か飲む日がある
3.ほぼ毎日飲むが、飲まないと決めた時でも問題なく過ごせる
4.毎日飲む習慣があり、飲まないと決めたはずでも理由を付けて飲んでしまう
5.お酒が抜けると震えたり、冷や汗をかいたりする

 お酒を飲む人の中で1の段階は健康影響が最も少ない“機会飲酒”と呼ばれる。医学的には2 までが推奨され、週1日の休肝日だけでは心もとない。笑い話のようだが、3以上のレベルの人は定期健康診断の問診で飲酒量を過少申告しがちだ。

 そして4のレベルでは飲酒がコントロールできず、5のレベルではアルコールが切れると離脱症状(禁断症状)が現れる。4は“精神的な依存”、5になると“身体的依存”となり、専門的な治療を要する状態となる。最終的な段階名で進むと“飲みっぱなし”に陥り、これを「連続飲酒発作」と呼ぶ。

 日本ではアルコール依存症の疑いのある人が440万人、アルコール依存症患者は80万人と推計されている(アルコール依存症に関する厚労省ウェブページより)。

 お酒の種類によって、ビンや缶ごとに含まれるアルコール量は異なるが、一日60グラム以上の純アルコール成分(ビール中ビン3本、日本酒3合、25%焼酎300ml以上)を「多量飲酒」、対照的に1日20グラムまでを「節度ある適度な飲酒」と区別する。

 職場の健康管理を手掛けるなかで、お酒によって心身の健康を害するだけでなく、仕事や家庭、日常や社会生活を壊してしまった働く人を少なからず見てきた。

 個人としては家飲みであっても飲む日と飲まない日を明確に分けること。そして人事労務部門としては、飲酒やそれによる自社の問題を産業医等の専門家と定期的に共有し、家飲みでも適切な飲酒を楽しむよう、周知することをお勧めしたい。