家族との関係など、個人的な悩みがメンタルヘルスの悪化を招く例は少なくない。コロナ禍で外出自粛やテレワークを強いられるなか、関係の悪い夫婦は逃げ場のない状況に置かれ、強いストレスを感じている。

(写真:123RF)

 2020年12月25日に厚生労働省が「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果概要について」を公表し、2月から調査の実施された9月の間で、何らかの不安などを感じた人が半数程度いて、特に4月~5月は6割を超えていたことが明らかになった。その調査では「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、困ったことやストレスに感じたこと」について聞いているが、中でも「家族などに関すること」に注目した。

明らかになってきた働く人の個人的な悩み

 困ったことやストレスに感じたこととして「家族・親戚・友人などに会えないこと」を挙げた人が5割弱に上った。3番目以降は「仕事や家事等の効率が落ちたこと」「子供の勉強や進学に影響が出たり、友達と遊ぶ機会が減ったこと」「家庭内のいさかいが増えたこと」「子供や配偶者、パートナーとの関係が変化したこと」が続く。

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複数回答、出所:「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果概要について」(厚生労働省 社会援護局 障害保健福祉部 精神障害保健課、回答総数10,981件)

 職場のメンタルヘルスを長年取り扱った中で、新型コロナの流行前からこれらに類似した悩みを持つ人が少なくないと感じてきたし、これらの問題に対して働く人はしばしば脆弱であると思う。厚生労働省も問題意識を持つレベルに上がってきたからこそ、今回の調査項目に含めた、という解釈も成り立つ。

個人の問題だから自己責任なのか?

 家族などに関する個人的な悩みは、日本における職場のメンタルヘルス対策から除外されている。例年行われるストレスチェックの質問項目に、家族等の支援は含まれるが、個人的な不安や悩みは聞かれない。夫婦間や親子間のトラブル、子供の不登校等の問題は強烈なストレス要因となり、解決がたやすくないことが多い。現実にはこれらをきっかけとしてメンタルヘルス不調に陥る人もいる。

 次に夫婦間の関係が悪化するサイクルを示してみた。外出自粛やテレワークになれば関係の悪い夫婦は、双方とも逃げ場のない状況に置かれる。夫婦の離婚や別居によるストレスの強さは、自身の病気や怪我、多忙による心身の過労を上回ることも明らかにされている(夏目誠「出来事のストレス評価」精神経誌2008、110巻3号)。

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夫婦間の関係が悪化するサイクル (亀田高志著『図解 新型コロナウイルスメンタルヘルス対策』(エクスナレッジ)から引用・改変)

 日本人は海外の人たちと比べて、コミュニケーションが下手だと思う。男女差別がマスコミで問題になることが多いが、年功序列の価値観が中高年層に根強いこともあって、ざっくばらんな話が職場だけでなくプライベートでも難しい。仕事柄、出張を繰り返してきたが、列車や飛行機の中で道中互いに口を利かず、そっぽを向いたままスマホを触り続ける、夫婦と思しき二人連れの多さが勝手ながら心配になる。